1931年にHuckelが提案した説によれば、ベンゼンのような環状の共役ジエンは、その環状共役系に含まれる電子数が、nを整数(すなわち、0,1,2,3,・・・)として、4n+2であれば、特に安定になるであろう。6個の非局在化した電子を持つベンゼンの場合は、n=1である(4n+2=6)。芳香族性に関するこの非常に有用なHuckel則ニ刺激されて、その芳香族性を試そうとする目的で種々の不飽和環状化合物を合成しようとする研究が活発に行なわれた。
Huckel則の長所は、π電子をσ電子と分離して取り扱うので対象分子が限られてくる。しかし、有機化学で興味のもたれている大多数の分子を取り扱えるので、この方法は有用である。また、短所としては、β(相対エネルギー)の最適値はHuckel則による計算結果をどのような実測値と比較するかによって異なる。また、ヘテロ原子を含む系では実験的に決定すべきパラメータの数が増加する。また類似した化合物を一組とすると、それらの組の数も増加し、また、各組の異なった種類の実測値ごとに最適のパラメータ毎が異なるのである。ヘテロ原子を含む系に対してパラメータが一定しないのはこのためであり、このように定量的な目的には使えないことが短所である。
Huckel則ではπ電子の定性的な性質を論じたり、一連の化合物について実測値を整理したりするのに有用である。
Huckelは分子軌道理論に基づいて、ベンゼン分子は6個のp軌道(各炭素原子から1個ずつ)が相互作用してそのパイ系の6個の分子軌道になる。これらのパイ軌道の相対的なエネルギー準位を(図−1)に示す。
Huckel 則について
1931年にHuckelが提案した説によれば、ベンゼンのような環状の共役ジエンは、その環状共役系に含まれる電子数が、nを整数(すなわち、0,1,2,3,・・・)として、4n+2であれば、特に安定になるであろう。6個の非局在化した電子を持つベンゼンの場合は、n=1である(4n+2=6)。芳香族性に関するこの非常に有用なHuckel則ニ刺激されて、その芳香族性を試そうとする目的で種々の不飽和環状化合物を合成しようとする研究が活発に行なわれた。
Huckel則の長所は、π電子をσ電子と分離して取り扱うので対象分子が限られてくる。しかし、有機化学で興味のもたれている大多数の...