期末決算直前の災害の発生による業績予想修正時の監査上の対応2

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    資料紹介

    期末決算直前の災害の発生により、クライアント先より被災情報・業績予想の修正可能性が伝えられた場合の監査上留意すべき事項を、日本公認会計士協会の会長通帳等をもとに、論じたレポートです。

    資料の原本内容

    期末決算直前の災害の発生により、クライアント先より被災情報・業績予想の修正可

    能性が伝えられました。当該状況で、監査上留意すべき事項についてあなたの考えを述べなさい。
    序章  大規模地震災害に関する会計処理及び監査対応の基本的な考え方
     平成23年3月11日に起きた東北地方太平洋沖地震とそれに伴い発生した津波、及びその後の余震により引き起こされた大規模地震災害は、日本企業に多い3月決算の期末日直前に発生し、かつ、極めて甚大な被害をもたらした。そのため、監査人にとってもクライアント先が被災しそれに伴う業績予想の修正がなされたケースも多かったと想像され、特に災害損失等を計上する会計処理に際しての事実確認や金額の合理的な見積りにおいては時間的制約等もあり多くの困難を伴ったと想定される。

    このような状況下での会計処理及び監査上の対応については、会長通帳平成23年第1号「東北地方太平洋沖地震による災害に関する監査対応」にて公表されており、以下において、期末日に近い時期に大規模地震災害が発生した場合の一般的な対応を述べていく。
    監査の目的は、企業が作成した財務諸表がすべての重要な点において適正に表示されているかどうかについて、監査人が自ら入手した監査証拠に基づき監査意見を表明することにある。しかし、期末日に近い時期に甚大な災害が発生した場合、平常時であれば入手可能な監査証拠が得られないことがあり、監査手続の選択や入手し得る監査証拠の証拠力が監査上の重要なポイントとなる。特に、会計上の見積りの合理性については、適切に判断すべきであるが、今回の災害発生の状況から判断し、それぞれの会計事象に係る会計基準が想定する事実確認や見積りの合理性要件と比較し、ある程度の概算による会計処理も合理的な見積りの範囲内にあるものと判断できる場合もあると考えられる。

    監査上の留意点としては、データ収集や会計上の見積りに関して困難なケースも想定されるが、そうした状況の下での合理的な損失等の見積りが財務諸表に適切に反映された上で、データ収集や会計上の見積りの制約に関する重要な事項が注記において適切に開示されていることを確かめる必要がある。

    また、監査手続に関して、一部監査手続の実施に制約がある場合でも、他の監査手続から得た証拠、内部統制の状況及び過去の監査結果なども含め入手した証拠を総合的に評価した結果、必要な心証を得ることができる場合は、重要な監査手続の制約とならない場合もあることに留意する必要がある。
    大規模地震災害が発生した際の会計処理及び監査対応の基本的考え方は以上の述べた通りである。次章以降では、個別的な論点として、大規模地震災害に伴う災害損失の会計処理や監査上の留意点を述べる。
    災害損失等の会計処理について
    ①固定資産(建物等の有形固定資産、ソフトウェア等の無形固定資産、投資不動産等)や棚卸資産(商品等)の滅失損失

    固定資産や棚卸資産に生じた被災前の帳簿価額の全部又は一部の滅失損失は、原則として、当該損失を示す適当な名称を付した科目をもって、損益計算書の特別損失として計上することになる。

    なお、固定資産や棚卸資産に対する損害保険の付保による保険金の受取りについて、仮に受取保険金の確定までにかなり時間を要する場合には、実務的対応として保険に関してその付保状況を注記において説明するケースが生じることが考えられる。

    監査に際しては、固定資産・棚卸資産について、災害により画一的に虚偽記載のリスクが高まるわけではないことや、通常時の監査でも、精査等により利用可能なすべての情報を検証しているわけでなく、あくまで心証的な監査証拠に依拠するものとされていることに留意が必要である。また、監査証拠に関しては、実査に加え、質問・観察によるものや過去の監査結果・その他の情報など様々な手続によるものがあることに改めて留意し、「序章 大規模地震災害に関する会計処理及び監査対応の基本的な考え方」に記載した通り、適切に対応する必要がある。
    ② 災害により損壊した資産の撤去費用等

    撤去費用等は、決算日までに実施されたものは未払金に計上し、また、決算日後に実施が予定されているものについては、企業会計原則注解(注18)の要件を満たすことを条件に引当金として計上することになると考えられる。これらの撤去費用等又は引当金繰入額は、原則として、当該損失を示す適当な名称を付した科目をもって、損益計算書の特別損失として計上することになると考えられる。

    監査に際しては、撤去費用等の見積りについて、十分かつ適切な監査証拠を基礎としてその合理性を評価することが適切であるが、監査基準委員会報告書第13号「会計上の見積りの監査」にあるとおり、経営者の見積りが、監査人の見積額の「許容範囲内にある場合には、監査人は、経営者の見積りが合理的であると判断する」こととされているので留意が必要である。
    ③ 災害資産の原状回復費用等

    原状回復費用等は、修繕費に準じた会計処理になると考えられる。関連する支出が原状回復を超えて価値を増加させるものである場合は、資本的支出として会計処理することになると考えられる。資本的支出として認められない原状回復費用等又は引当金繰入額は、原則として、当該損失を示す適当な名称を付した科目をもって、損益計算書の特別損失として計上することになると考えられる。
    ④ 災害による工場・店舗等の移転費用等

    決算日までに発生した移転費用等については、原則として、当該損失を示す適当な名称を付した科目をもって、損益計算書の特別損失として計上することになると考えられる。移転方針は決定しているが、決算日までに実行されておらず、かつ、金額的に重要性が高いと見込まれる場合は、注記において概要を説明することも考えられる。
    ⑤ 災害による操業・営業休止期間中の固定費

    操業・営業休止期間中(電力会社が行う計画停電によるものも含む。)で決算日までに発生した固定費は、原価性が認められない場合もあると考えられる。その場合は、当該損失を示す適当な名称を付した科目をもって、損益計算書の特別損失として計上することになると考えられる。
    ⑥ 被災した代理店、特約店等の取引先に対する見舞金、復旧支援費用(債権の免除損を含む。)

    見舞金、復旧支援費用は、交際費又は寄付金に準じた会計処理になると考えられる。これらの費用は、原則として、当該損失を示す適当な名称を付した科目をもって、損益計算書の特別損失として計上することになると考えられる。なお、これらの費用については、既発生額が対象であり、未発生額については引当金の計上要件を満たさないのが一般的と考えられる。

    被災に伴い取引先に対し債権を免除又は減免する場合においては、当該費用を示す適当な名称を付した科目をもって、損益計算書の特別損失として計上することになると考えられる。
    ⑦ 被災した従業員、役員等に対する見舞金、ホテルの宿泊代等の復旧支援費用

    会社従業員等に対する復旧支援費用は、福利厚生費に準じた会計処理になると考えられるが、発生原因に臨時性が認められることから、これらの費用は、原則として、当該損失を示す適当な名称を付した科目をもって、損益計算書の特別損失として計上することになると考えられる。なお、これらの費用については、既発生額が対象であり、未発生額については引当金の計上要件を満たさないのが一般的と考えられる。
    関連する会計・監査事象について
    ① 繰延税金資産の回収可能性の判断

    繰延税金資産の回収可能性に関しては、今回の災害が企業の将来収益力にどのような影響(一時的か長期的かなどを含む。)を及ぼすか、特に災害発生による主要な計画要因の将来変化の可能性に留意し、翌期以降の事業計画又は利益計画の見直しの要否について、検討することになると考えられる。その際、監査委員会報告第66 号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」によれば、会社による将来の経営計画等の作成が基礎となるが、「明らかに合理性を欠く業績予測であると認められる場合には、適宜その修正を行った上で課税所得を見積もる必要があることに留意する」ことが必要である。

    また、災害損失による多額の税務上の繰越欠損金等の発生等による、繰延税金資産に係る会社区分(監査委員会報告第66 号)の見直しの要否、例示区分④のただし書き(非経常的な特別の原因により発生)に分類することの適否について、今回の災害により大きな損害を受けている場合には「非経常的な特別の原因」に該当している場合も多いと考えられるが、災害の影響の程度を踏まえ、適切に検討することになる。
    ② 取引先の財政状態の悪化等

    今回の災害により、取引先の財政状態が悪化し、売掛金等の営業債権(敷金や差入保証金を含む。)の貸倒れ等のリスクが高まる場合もあるため、債権の評価(担保権の評価を含む。)に関しては、留意する必要があると考えられる。

    監査上、データ収集や会計上の見積りが困難なケースは、そうした制約を踏まえ、「序章 大規模地震災害に関する会計処理及び監査対応の基本的な考え方」にあるとおり、適切に対応する必要がある。
    ③ 保有有価証券の時価の下落

    時価のある有価証券については、取引所の相場を時価とする会計基準が定着しているため、当該基準に従い会計処理することになる。

    時価を把握することが極めて困難と認められる株式(非上場株式)については、可能な限り災害発生の影響を反映させた実質価額を把握し、減損の要否について検討することが考えられるが、データ収集や会計上の見積りが困難なケースは、...

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