はじめに
本レポートでは、建国以来、厳しい国際環境の中で構築されてきた中国の統治体制、特に軍事組織をまず整理する。
その上で、今日の中国が軍事面、経済面でどのような安全保障上の課題を抱えているか、それらの課題に対しどのように取り組んでいるのかを整理する。
自らの抱える課題解決に向け、軍事大国化、経済大国化しつつある中国は、日本や東アジアにとっての脅威となっており、それらの影響を、アメリカとの関係を意識しつつ整理する。
中国が与えるこれらの影響に対して、日本や東アジア各国は、どのように対応していくべきなのか。どのように中国とつきあっていくべきなのかについて述べる。
昨年は、アジアカップサッカーにおける中国国民の反日的な運動、原子力潜水艦の日本領海の侵犯、李登輝元台湾総統の来日に対する中国の反対、北朝鮮問題における中国のイニシアチブなど、中国と日本・東アジアとの関係を考える上で重要な多くの事件が発生している。これらの事件の持つ今日的な意味を考える中で、中国と日本・東アジアとの安全保障上の関係について述べる。
第1章 厳しい国際環境下で構築されてきた中国の統治機構
1 厳しい国際環境下に置かれてきた中国
1949年の国家成立直後から、中国は常に安全が脅かされてきた。建国直後にソ連との友好同盟条約を締結し、朝鮮戦争に参戦した。その後二度の台湾海峡の危機を経て、中ソの対立、東西冷戦の中に置かれた。周辺国との国境を巡る争いも絶えず、中印国境紛争や中越戦争など、戦争、紛争、緊張の連続であった。それに対応するため、自らの統治体制や軍の整備を行ってきた。
また、朝鮮戦争、インドシナ戦争、台湾海峡での国民政府軍との戦争の際、重ねて米国の核の威嚇を受けた経験から、毛沢東は国家の安全を守るには核兵器の開発が必要と決断した。
「中国と日本・東アジアとの安全保障上の関係」
はじめに
第1章 厳しい国際環境下で構築されてきた中国の統治機構
1 厳しい国際環境下に置かれてきた中国
2 中国の統治機構
第2章 中国の国家戦略目標と「新安全保障観」
1 中国の国家戦略目標
2 「新安全保障観」
第3章 中国の抱える安全保障上の課題とそれが日本や東アジアに与える影響
1 中国の軍備拡大が及ぼす影響
(1) 軍備の拡大、近代化
① 米ロの軍事的脅威への対抗
② 中国周辺の局部戦争の抑制
③ 台湾統一、南シナ海、東シナ海などの領土問題の解決
④ 中国共産党独裁体制の維持
(2) 中国の核兵器開発が生む中国の核兵器開発が生む核の威嚇・脅威の拡大
(3) 中国の海洋進出に伴う東アジア各国の権益、資源、シーレーンの侵害
2 中国の経済活動、外交が及ぼす影響
(1) 経済発展戦略
(2) 中国の経済大国化が及ぼす悪影響
(3) 中国の全方位協調外交が及ぼす影響
第4章 日本や東アジアが中国に対してとるべき対応
1 東アジア各国の米国との同盟強化
2 日本の軍事・経済...