今昔物語集における天狗

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    資料紹介

     天狗と聞いて多くの人が想像するもの。それは、真っ赤な顔をし、長く大きな鼻を持ち、白い山伏のような衣服を纏ったものだろう。翼が生えていて、羽団扇をもっている、という特徴もある。
     私は、天狗といっても、特にこれといった思い浮かぶエピソードもないのだが、中世では、天狗は「仏法を妨げるもの」という認識があったようである。
     『今昔物語集』にこのような説話が収録されている。
     昔、天竺に天狗がいた。天竺から震旦に渡ってくる途中、海の水が一筋に、「諸行無常、是生滅法、生滅々已、寂滅為楽」と鳴ったので、天狗はこれを聞いて非常に驚き、「海の水がどうしてこんな尊い深遠な法文を唱えるのであろうか」と不思議な気がして、「この水の正体を突き止め、なんとしてでも邪魔してやらずにはおくまい」と思い、水の音をたどり、探し求めながら来るうち、震旦まで来たが、ここでも同じように鳴っている。
     こうして、震旦も過ぎ、日本の近くの海まで来たが、やはり同じように唱えるのが聞こえた。そうして博多、門司、瀬戸内海を経て、淀川から宇治川をさかのぼっていくにつれ、ますます声が高くなる。さらについていくと、比叡山の横川までやってきた。
     たどり着いたのは僧が使う厠。ますます声はかまびすしく、四天王や護法童子の護衛も厳しく、それ以上近寄れなかったので、隠れて聞いていたが、なんとも言えず恐ろしい。
    もっとも劣った天道子に恐る恐る「この水がこのように尊くも深遠な法文を唱えるのはどういう訳でしょうか。」と尋ねると、天童子は「この川は比叡山で学問をする多くの僧の厠から出る水の流れの末にあたっているだからかのように尊い法文を水も唱えているのだ」と答えた。
     天狗はこれを聞いて、妨げようという気持ちもたちまち消えうせ、「厠の流水の末さえなおこのような深遠な法文を唱えているましてこの山の僧はどれほど尊いことであろう。

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    今昔物語集における「天狗」
     天狗と聞いて多くの人が想像するもの。それは、真っ赤な顔をし、長く大きな鼻を持ち、白い山伏のような衣服を纏ったものだろう。翼が生えていて、羽団扇をもっている、という特徴もある。
     私は、天狗といっても、特にこれといった思い浮かぶエピソードもないのだが、中世では、天狗は「仏法を妨げるもの」という認識があったようである。
    『今昔物語集』にこのような説話が収録されている。
    昔、天竺に天狗がいた。天竺から震旦に渡ってくる途中、海の水が一筋に、「諸行無常、是生滅法、生滅々已、寂滅為楽」と鳴ったので、天狗はこれを聞いて非常に驚き、「海の水がどうしてこんな尊い深遠な法文を唱えるのであろうか」と不思議な気がして、「この水の正体を突き止め、なんとしてでも邪魔してやらずにはおくまい」と思い、水の音をたどり、探し求めながら来るうち、震旦まで来たが、ここでも同じように鳴っている。
    こうして、震旦も過ぎ、日本の近くの海まで来たが、やはり同じように唱えるのが聞こえた。そうして博多、門司、瀬戸内海を経て、淀川から宇治川をさかのぼっていくにつれ、ますます声が高くなる。さらについていくと、比...

    コメント1件

    kentaro1214 購入
    わかりやすかったです。
    参考にさせていただきます。
    2007/02/02 16:56 (17年10ヶ月前)

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