2003年6月、ソニーはエレクトロニクス製品の新ブランド『QUALIA(クオリア)』を発表した。大量生産を行ってコストや生産性を追求していくという従来のエレクトロニクス製品では難しかった「もの作りへのこだわり」を重視し、製品の開発や製造に加え、マーケティングやサービス、コンテンツなどすべての段階において「感動価値の創造」を目指すものであるという。
本レポートのテーマは「1.企業の事業分野における垂直統合・アウトソージング」または「2.製品のコスト優位と差別化優位」のどちらかを選択するものではあるが、このQUALIA事例ではその双方にまたがるものであり、どちらか一方のみを論じて扱いきれるものではないと考えられる。そこで、本稿では主として1を選択し、垂直統合によるソニーのQUALIAへの取り組みを考察するとともに、その差別化優位についても検討していきたい。
(中略)
2005年1月現在、ソニーはQUALIA製品として液晶プロジェクター、プラズマテレビなど7種類8つの製品を発表、販売している。その売り上げについての細かな資料は公表されていないが、IT業界の識者らはQUALIA発売当初より好意的な観測を述べている。
QUALIAの展開は始まって2年とたっておらず、商品点数も少ないため市場の評価も定まっているとは言い難い。また、実際の売上もさることながら、QUALIAの場合はソニーの新しい「感動価値」への取り組みが消費者に認知され、理解されることがソニーにとって大きな利益となるだろう。このような消費者意識を引き出し、新しいマーケットしての広がりが生まれれば、すでに貿易総額で日本を抜いた中国勢力の擡頭にも対抗しうる企業となるだろう。
ソニーの『QUALIA』戦略にみる商品開発の垂直統合と差別化優位について
1.はじめに
2003 年 6 月、ソニーはエレクトロニクス製品の新ブランド『QUALIA(クオリア)』を発表した。大
量生産を行ってコストや生産性を追求していくという従来のエレクトロニクス製品では難しかった「も
の作りへのこだわり」を重視し、製品の開発や製造に加え、マーケティングやサービス、コンテンツな
どすべての段階において「感動価値の創造」を目指すものであるという。
本レポートのテーマは「1.企業の事業分野における垂直統合・アウトソージング」または「2.製
品のコスト優位と差別化優位」のどちらかを選択するものではあるが、この QUALIA 事例ではその双
本稿では主として1を選択し、垂直統合によるソニーの QUALIA への取り組みを考察するとともに、
その差別化優位についても検討していきたい。
2.『QUALIA』ブランドについて
2-1.QUALIA とは
そもそも QUALIA
タサイエンス研究所シニアリサーチャーを務める茂木健一郎氏であり、同氏のウェブサイトによれば、
以下のように紹介さ...