同和教育の意義・歴史
学校における同和(人権)教育実践の具体的なあり方。
同和教育とは、同和問題を解決するための教育の営みの総称である。
同和問題とは、日本の歴史過程において形成された身分階層構造に基づく差別により、日本国民の一部の集団が経済的・社会的・文化的に低位の状態に置かれ、現代社会においても、近代社会の原理として何人にも保障されている市民的権利と自由を完全に保障されていないという社会問題である。封建時代の身分制度や歴史的、社会的に形成された人びとの意識に起因する差別が、現在もなおさまざまなかたちで現れているといえる。
明治維新以降、法律により、同和地区住民は一応制度上の身分差別から開放された。しかし、現実には同和問題と言われ今日まで議論され続けており、今なお解決をみていない。
そのような状況の中で同和教育は何を目的としているか。同和問題の解決に果たす同和教育の役割はまず、それまで奪われていた教育を受ける権利の保障、とりわけ、教育の結果としての学力・進路の保証を行うこと、そして差別の悪循環を次世代に引き継がせないことである。そしてもう一つは、具体的行動として差別することだけでなく心理的差別についても解消することを目指しており、同和問題認識を深めることで人権意識を高め、同和問題をはじめとするあらゆる差別の解決のために行動できる子どもを育てる学習を推進することが目的である。つまり同和教育は「差別を許さない」という共通基盤を持つ人権教育と互いに重なり、ともに発展していかなければならないものであるともいえる。
その歴史を概観すると、まず戦後における長期欠席・不就学解消に向けた取り組みをみることができる。同和地区児童・生徒の低学力実態が明らかになり、その解消方法としてまずは長期欠席・不就学を解消することによって教育を受ける機会自体を改善していくことを目的としている。その後、60年代ごろからはこの取り組みは学力・進路保障の取り組みへとつながっていく。これまでの大きな課題であった長期欠席・不就学はある程度解消されていったが、今度はその大きな問題に隠れていた学力の問題が明らかになってきたためである。具体的には同和地区の高校進学率が平均値に比べかなり下回る数値を示していたことが指摘されていた。この問題を解消するために、補修学級の設置や、さらには学校・行政が一体となった同和地区児童・生徒の学力向上を目指す施策がとられた。これらの対策は効果があったと考えられ、数値としても進学率の差は目立ったものではなくなってきている。この対策は学習指導などの教育対策と、奨学金等の経済的対策の両面が機能したことが成功した要因だと考える。
これらの大きな流れとしての同和教育に付随して、その他にも実践として取り組まれた活動についても、取り上げてその効果、課題について見ていく。
まず抽出促進という方法がある。学校で学んでいる学級での一斉授業では伸ばしきれていない子どもの学力保障を別教室で行うもので、基本的には国語・数学・英語を中心にマンツーマンに近い形で一人一人の課題に応じた内容を学習する。この対策によって子ども一人一人の課題に応じた焦点化が可能で、学力を底上げするという目的に対しては効果があるものであったが、知識の一方的な教え込みであり、集団行動や仲間との交流などの学級での一斉指導の持つほかの側面について対応しきれていないという課題もあった。
次に分割授業、大人数による一斉教授とマンツーマンに近い抽出教授それぞれのデメリットを考慮し、より効果的な教育的刺激を得られる適切な規模人数
同和教育の意義・歴史
学校における同和(人権)教育実践の具体的なあり方。
同和教育とは、同和問題を解決するための教育の営みの総称である。
同和問題とは、日本の歴史過程において形成された身分階層構造に基づく差別により、日本国民の一部の集団が経済的・社会的・文化的に低位の状態に置かれ、現代社会においても、近代社会の原理として何人にも保障されている市民的権利と自由を完全に保障されていないという社会問題である。封建時代の身分制度や歴史的、社会的に形成された人びとの意識に起因する差別が、現在もなおさまざまなかたちで現れているといえる。
明治維新以降、法律により、同和地区住民は一応制度上の身分差別から開放された。しかし、現実には同和問題と言われ今日まで議論され続けており、今なお解決をみていない。
そのような状況の中で同和教育は何を目的としているか。同和問題の解決に果たす同和教育の役割はまず、それまで奪われていた教育を受ける権利の保障、とりわけ、教育の結果としての学力・進路の保証を行うこと、そして差別の悪循環を次世代に引き継がせないことである。そしてもう一つは、具体的行動として差別することだけで...