米軍再編と日米同盟
―日本に求められる役割―
目次
Ⅰ.はじめに
Ⅱ.米軍のトランスフォーメーション
1.変革の背景
2.加速する「変革」
3.米軍「基地」の再編
Ⅲ.東アジアの米軍と在日米軍
1.東アジアの米軍、歴史的経緯
2.在日米軍の機能の変化と「基地移転」
3.在日米軍と自衛隊
Ⅳ.日米同盟の役割
1.日米同盟、変化の歴史
2.何が日本に必要とされるのか
3.対等な同盟に向けて
Ⅳ.おわりに
東アジアの公共財としての日米同盟
Ⅰ.はじめに
2005年から2006年にかけて、在日米軍の基地移転についての報道がマスメディアで大きく取り上げられた。その文脈の中では、在日米軍基地の移転と「米軍の変革」について取り上げられることも多かった。もちろん、米軍の世界規模の「変革」(トランスフォーメーション)と、在日米軍の整理縮小問題の間には、密接な関係がある。しかし、本来この両者はレベルが違うため、分けて捉えなければならない。そもそも、米軍の「機能の変革」と、それに伴う日本の「基地の再編」の間には、どのような相関関係があるのか。また、「日米安全保障条約」を中心とした日米同盟の定義は、その流れの中で、どのように変化していくのだろうか。そして同盟の定義の変化はアメリカが日本に求める役割を変えるのだろうか。本稿の目的は第一に、米軍の「トランスフォーメーション」と、基地の世界規模での再編の中で、在日米軍の「再編」がどのような意図をもって行われているのか、その相関関係を明らかにすることである。そして第二に、その変革の中で「アメリカは日本に何を求めているのか」を、考察していくことである。まず、第Ⅱ章では、米軍の変革が、なぜ成されなければならないのかを考えた上で、米軍の具体的な「変革」と「再編」について検討する。次に、第Ⅲ章では、第Ⅱ章の内容を踏まえ、「在日米軍」に的を絞り、その役割の変化を追う。そして、世界的な「再編」の中で、在日米軍の機能強化が、東アジアに対してどのような影響を及ぼすのかを考察する。最後に第Ⅳ章では、世界的に見て最大規模の米軍兵力を抱える日本が、これからアメリカに何を求められるのかを、そして第Ⅴ章では、Ⅰ章からⅣ章までの内容を踏まえ、日本独自の戦略について提言をすることが目的である。
Ⅱ.米軍のトランスフォーメンション
1. 変革の背景
まず、なぜ米軍は世界的な再編の動きを加速させているのだろうか。その理由は、1997年及び2001年の「4年毎の国防政策見直し」(Quadrennial Defense Review=QDR)に明確にされている。1997年のQDR(以下QDR・97)はクリントン政権時に発表されたものであるが、ここでは、「軍の近代化」と「不確定な未来の脅威に対する保証」が重点目標として掲げられていた(注1)。しかし「不確定の未来」とあるように、その対象が漠然としていたこと、また、冷戦後の軍事費の大幅な削減のため軍の士気が低下していたこともあり、変革は思うように進まなかった。政権交代後、ブッシュ大統領が就任演説で「軍の士気の回復」を政策目標として挙げた事が、それを物語っている。
しかし2001年のQDR(QDR・01)が発表される直前に、テロリストによってアメリカ本土が攻撃されるという事態が起こる。直後に出されたQDR・01は、その先の「米軍変革」に明確に言及したものになった。中でも、①「脅威」ベースから「能力」ベースへの転換 ②「不安定の弧」に対応するための配備転換 の2点が、特に重要視されることになり、その後の「変革」の
米軍再編と日米同盟
―日本に求められる役割―
目次
Ⅰ.はじめに
Ⅱ.米軍のトランスフォーメーション
1.変革の背景
2.加速する「変革」
3.米軍「基地」の再編
Ⅲ.東アジアの米軍と在日米軍
1.東アジアの米軍、歴史的経緯
2.在日米軍の機能の変化と「基地移転」
3.在日米軍と自衛隊
Ⅳ.日米同盟の役割
1.日米同盟、変化の歴史
2.何が日本に必要とされるのか
3.対等な同盟に向けて
Ⅳ.おわりに
東アジアの公共財としての日米同盟
Ⅰ.はじめに
2005年から2006年にかけて、在日米軍の基地移転についての報道がマスメディアで大きく取り上げられた。その文脈の中では、在日米軍基地の移転と「米軍の変革」について取り上げられることも多かった。もちろん、米軍の世界規模の「変革」(トランスフォーメーション)と、在日米軍の整理縮小問題の間には、密接な関係がある。しかし、本来この両者はレベルが違うため、分けて捉えなければならない。そもそも、米軍の「機能の変革」と、それに伴う日本の「基地の再編」の間には、どのような相関関係があるのか。また、「日米安全保障条約」を中心とした日米同盟の定義は、...