現代の温泉業と課題
はじめに
日本の観光地は、1980年代後半からはじまるバブル経済とその後の景気低迷によって、構造改革のタイミングを逃してしまったといえるのではないか。
観光需要が大きく変化しようとしていた時期に、黙っていてもお客様がやってくる時代になってしまい、バブル経済崩壊後の長期低迷期を含めて改革への取り組みが遅れてしまった。
国民人気の最も高い旅行タイプが温泉旅行であるにもかかわらず、全国的に温泉観光地の低迷は、バブル崩壊後の負債処理や不況を含めて続いている。これは日本の観光の最大の課題といっても過言ではないでしょう。
多くの課題を抱えた温泉地は今、どのような現状であるか、どのような課題に直面しているのか、そしてどのような対策をとっているのかについて調査してみた。
現在の温泉観光
Ⅰ 国内温泉が抱える問題
90年代に整備が進んだ公共主導による温泉施設はバブル崩壊後の不況対策の意味合いもあったが、結果として、地方自治体の借金は90年の76兆円から00年末には184兆円に達し、地方の地域経営を圧迫し続けている。
2000年時点での公衆浴場は6,245箇所を数え、単純計算すると1市町村あたり1.9箇所となる。既存の温泉地と民間の温泉施設を加えた合計は1万箇所を超え、単純計算で1市町村あたり3箇所以上の温泉施設があることになる。
しかし、温泉地が増え続ける一方で、宿泊利用者は減少している。
1990年と2000年を比較すると、1件当たりの宿泊利用者は3.3%の減少が見られる。
<温泉地>
1990年: 14,014万人/2,360箇所=5.94万人/箇所
↓
2000年: 13,753万人/2,988箇所=4.60万人/箇所
<温泉・宿泊施設>
1990年: 14,014万人/15,119軒=0.92万人/軒
↓
2000年: 13,753万人/15,512軒=0.89万人/軒
Ⅱ 対策
現在の日本の温泉地は深刻な課題を抱えており、どの観光地にもいえることである。
しかしそんな中で独自の対策をし、成功させようとしているところもある。3つの例をあげ、対策について考えてみた。
a.草津温泉
草津温泉では、2000年に「泉質主義」を打ち出し、観光客数も好転してきている。
これは温泉地としての差別化をはかるための戦略であり、言い換えると、温泉のブランド化を世に問うたのであります。
それは別にPRのための虚言ではなく、草津温泉の「泉質主義」を標榜するのに十分だったからだ。
草津温泉の「泉質主義」宣言は、優れた効能を有する泉質と豊富な源泉量に裏付けられたものだが、天与の恵みのみに頼っているわけではない。
草津町では、毎分3万6,000ℓ余りのうち、1万4,000ℓの源泉を管理しており、現在、町内の旅館・ホテル、温泉施設に給湯している。
「泉質主義」を宣言した草津の温泉施設では、いずれも98%台も適合数値が出ていて、看板の表示に偽りがないことが裏付けられている。
草津の打ち出した「泉質主義」には、他の温泉地との差別化を図るという戦略があるとともに、自らの特性を自覚し、それを徹底して磨き上げることにより、ブランド力を高めていこうとする狙いもあるのである。
b.東鳴子温泉
ここ数年、各地の湯冶パック、湯治プランと名づけられた宿泊プランが出されてきている。湯治を掲げた取り組みは一様に効果があがっているわけではないが、最も成功されているといわれているのが東鳴子温泉である。東鳴子温泉では閑散期の集客数ア
現代の温泉業と課題
はじめに
日本の観光地は、1980年代後半からはじまるバブル経済とその後の景気低迷によって、構造改革のタイミングを逃してしまったといえるのではないか。
観光需要が大きく変化しようとしていた時期に、黙っていてもお客様がやってくる時代になってしまい、バブル経済崩壊後の長期低迷期を含めて改革への取り組みが遅れてしまった。
国民人気の最も高い旅行タイプが温泉旅行であるにもかかわらず、全国的に温泉観光地の低迷は、バブル崩壊後の負債処理や不況を含めて続いている。これは日本の観光の最大の課題といっても過言ではないでしょう。
多くの課題を抱えた温泉地は今、どのような現状であるか、どのような課題に直面しているのか、そしてどのような対策をとっているのかについて調査してみた。
現在の温泉観光
Ⅰ 国内温泉が抱える問題
90年代に整備が進んだ公共主導による温泉施設はバブル崩壊後の不況対策の意味合いもあったが、結果として、地方自治体の借金は90年の76兆円から00年末には184兆円に達し、地方の地域経営を圧迫し続けている。
2000年時点での公衆浴場は6,245箇所を数え、単純計算すると1...