『ヴィクトリア時代の小説について、当時の社会背景なども考慮しながら述べよ。』
【序】
ヴィクトリア時代とは、ヴィクトリア女王がイギリスを統治していた1837年から1901年のおよそ70年にわたる期間をさす。この時期は、イギリス史におけるイギリス社会の絶頂期であると同時に、文学界においても新しい時代の幕開けを経験した時期である。そこでうまれた小説はどのようなものであっただろうか。本稿ではまず、ヴィクトリア時代に新しい文学の潮流が生れるにいたった社会的な背景について概観することにする。次に、ヴィクトリア時代の小説の特徴および文学史における位置づけについて論じる。最後に、ヴィクトリア時代の代表的作家(チャールズ・ディケンズ、メイクピース・サッカレー、ブロンテ姉妹、ジョージ・エリオット)の作品について、それぞれの特徴を当時の社会背景と関連づけながら論じてみたい。
【社会的背景】
ヴィクトリア時代は、歴史上最も文学と社会状況とが密接に関連した時代であった。とりわけ、社会・政治の進歩や科学技術の発達がもたらした文学界における変化は注目に値する。1760年頃からはじまった産業革命は富をもたらすと同時...