3-4コマはなぜ立っていられるのか

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    コマはなぜ立っていられるのか
    コマが回っているのを見ると無条件に感動しないか?
     コマというのは実に魅力的である。 回転しているというだけで、普通なら倒れてしまうような不安定な姿勢で立ち続けていられるのである。 それで、回転というものには未知の特別な力があるのだと考える人や、回転に神秘的なものを感じたりする人たちが多く出てくるわけだ。 「回転によって重力が生み出されているのだ!」なんて主張する人まで現われる始末である。
     その気持ちは理解できる。 私も学生時代、コマがなぜ立っていられるのかについて深く考え続けた。 それを説明していると思われる、教科書の「角運動量保存則」の部分を繰り返し読んでみたが理解できずに苦しんでいた。
     友人に聞いても、どうもはっきりした答えが返ってこない。 それでいてあまり不思議にも思わないのか、真剣に考えてくれる様子もない。
     「なぜコマは立っていられるのか?」
    この質問に明快に答えられる人が意外に少ないのである。 それがますます、回転というものに神秘を感じる原因となってしまう。
    実は単純明快に答えることは難しい
     一般向けの解説書などでは、コマが立っていられる理由として、「遠心力で軸の周りに均等に引かれているから」と解説してあるものが見られる。 有名な教授が書いておられたりするのだが。 私はこれを読んだ時、「なるほど、こんな簡単なことだったのか!」と感心してしばらくの間これを信じていた。 しかし後になってじっくり考えてみるとこれでは何の説明にもなっていないということに気付いた。 これは「軸がコマの重心を通っていないと不安定になる」理由を説明することは出来るが、なぜ軸が倒れないかを説明することは出来ない。 たとえコマの軸がまわりから均等に引かれようとも、重力はそれ以外の力としてある一方に働き、そのバランスを崩すことになるからだ。
    歳差運動
     コマが回りながらその軸を不安定にぐるぐる回すあの動きを歳差運動と呼ぶ。 惑星の自転にもこの動きがあり、年ごとに軸の向きに差が出るから「歳差」と呼ばれているのではないかと思うが、違っていたら教えて欲しい。 昔はみそすり運動という別名があったようだが、今もそうだろうか? 最近では味噌擂りをしないので、分りやすいように首振り運動と呼ばれているかも知れない。
     実は、この歳差運動を分かりやすく説明することが、コマがなぜ倒れないでいられるかを説明する近道になるのである。 詳しいことは次の記事で話すことにして、ここでは要点だけを簡単に説明するだけにしよう。 次のようになる。
     コマの回転軸が重力によって傾けられそうになると、回転の影響で、軸は加えられた力とは違う方向へ移動することになる。 それで、コマはそれ以上傾きを増す方向へは倒れないで、コマの軸の上端は水平面上をぐるぐる回ることになる。 これがコマが倒れない理由である。  コマの首振りは、重力とは違う方向へ軸が傾いた結果起きる現象なのである。
     途中の一番面倒な部分を軽くごまかしたのでこんなに簡単に説明できてしまった。 省略した肝心な部分は、「回転の影響で加えられた力とは違う方向へ軸が移動する」というところだが、これは特別に不思議な現象ではなく、いろんなところで体験できるものである。
    ジャイロ効果
     科学館や航空博物館などへ行くとよく、高速で回るジャイロを傾けるときに感じる奇妙な力を体験できるコーナーがあったりするのだが、体験されたことはあるだろうか? 回転している物体の軸は力を加えた方向には回ってくれないのである。 それとは

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    資料の原本内容

    コマはなぜ立っていられるのか
    コマが回っているのを見ると無条件に感動しないか?
     コマというのは実に魅力的である。 回転しているというだけで、普通なら倒れてしまうような不安定な姿勢で立ち続けていられるのである。 それで、回転というものには未知の特別な力があるのだと考える人や、回転に神秘的なものを感じたりする人たちが多く出てくるわけだ。 「回転によって重力が生み出されているのだ!」なんて主張する人まで現われる始末である。
     その気持ちは理解できる。 私も学生時代、コマがなぜ立っていられるのかについて深く考え続けた。 それを説明していると思われる、教科書の「角運動量保存則」の部分を繰り返し読んでみたが理解できずに苦しんでいた。
     友人に聞いても、どうもはっきりした答えが返ってこない。 それでいてあまり不思議にも思わないのか、真剣に考えてくれる様子もない。
     「なぜコマは立っていられるのか?」
    この質問に明快に答えられる人が意外に少ないのである。 それがますます、回転というものに神秘を感じる原因となってしまう。
    実は単純明快に答えることは難しい
     一般向けの解説書などでは、コマが立っていられる理由として、「遠心力で軸の周りに均等に引かれているから」と解説してあるものが見られる。 有名な教授が書いておられたりするのだが。 私はこれを読んだ時、「なるほど、こんな簡単なことだったのか!」と感心してしばらくの間これを信じていた。 しかし後になってじっくり考えてみるとこれでは何の説明にもなっていないということに気付いた。 これは「軸がコマの重心を通っていないと不安定になる」理由を説明することは出来るが、なぜ軸が倒れないかを説明することは出来ない。 たとえコマの軸がまわりから均等に引かれようとも、重力はそれ以外の力としてある一方に働き、そのバランスを崩すことになるからだ。
    歳差運動
     コマが回りながらその軸を不安定にぐるぐる回すあの動きを歳差運動と呼ぶ。 惑星の自転にもこの動きがあり、年ごとに軸の向きに差が出るから「歳差」と呼ばれているのではないかと思うが、違っていたら教えて欲しい。 昔はみそすり運動という別名があったようだが、今もそうだろうか? 最近では味噌擂りをしないので、分りやすいように首振り運動と呼ばれているかも知れない。
     実は、この歳差運動を分かりやすく説明することが、コマがなぜ倒れないでいられるかを説明する近道になるのである。 詳しいことは次の記事で話すことにして、ここでは要点だけを簡単に説明するだけにしよう。 次のようになる。
     コマの回転軸が重力によって傾けられそうになると、回転の影響で、軸は加えられた力とは違う方向へ移動することになる。 それで、コマはそれ以上傾きを増す方向へは倒れないで、コマの軸の上端は水平面上をぐるぐる回ることになる。 これがコマが倒れない理由である。  コマの首振りは、重力とは違う方向へ軸が傾いた結果起きる現象なのである。
     途中の一番面倒な部分を軽くごまかしたのでこんなに簡単に説明できてしまった。 省略した肝心な部分は、「回転の影響で加えられた力とは違う方向へ軸が移動する」というところだが、これは特別に不思議な現象ではなく、いろんなところで体験できるものである。
    ジャイロ効果
     科学館や航空博物館などへ行くとよく、高速で回るジャイロを傾けるときに感じる奇妙な力を体験できるコーナーがあったりするのだが、体験されたことはあるだろうか? 回転している物体の軸は力を加えた方向には回ってくれないのである。 それとは垂直の方向に移動することになる。 これは航空の分野では「ジャイロ効果」と呼ばれている。
     手軽に体験したければ、「地球ごま」という名前の商品が売っている。 (昔はそこらで買う事が出来たが最近は見かけない。 東急ハンズにあるらしい。) あるいは自転車の修理の時に車輪を外した時にでも、軸を持って誰かに車輪を回してもらい、それを傾けてみればいい。
     なぜ回転していると、力を加えた方向とは別方向へ移動するのだろうか? これを考えるのは少々複雑なので数学的道具の助けがあった方がいい。 それでも簡単に理解できると思うので興味のある方は次の説明も読んでいただきたい。
    コマの歳差運動
    複雑な式を使わなくても簡単に理解できる。
    回転をベクトルで表す
     回転を物理の問題として扱えるようにうまく表すにはどうしたらよいだろうか? 回転している物体を見るとき、ある部分はこっちへ、ある部分はあっちへ運動していて、一つの方向で表すことが難しく感じる。
     そこで回転軸を使って表現することにしたのである。  軸を決めれば回転の向きが固定されることになる。  それでも回転方向は軸の周りに右回りと左回りの二つあるのでどちらかに決めなければならない。 そこで右ねじを回転させた時にネジが進む方向に倣ってベクトルの方向を決めるのである。  そして回転の勢いをベクトルの長さを使って表すことにした。 こうすれば回転の様子を一つのベクトルだけで表現できることになる。 これが「角運動量ベクトル」と呼ばれているものの意味である。
     便利な表現方法としてこの方法を採用しただけであって、別にそのベクトルの方向に何か特別な力がかかるわけではないことに注意しよう。
    コマには倒れようとする力がかかる
     回っているコマがいくらまっすぐ安定して立っているように見えても僅かながら傾きがある。 それは軸が重心からずれていて常に微妙に振動していることや、床の僅かの凹凸や、周りの空気の流れなど、色んな要因が働いているからである。
     もし本当に安定しているのなら、コマが止まっても立っていられるはずである。 しかしそれには針を立てようとするような微妙なバランスが必要で、ほとんど無理な話である。 そして、軸がほんの僅かでも傾いていたら重力はこの軸を倒すように働くことになる。
     さて、軸が倒れる時、コマの先端には床との摩擦があるので、コマの先端部分を支点として倒れることになる。 つまり重力は、コマの先端部分を軸にしてコマ全体を回転させるように働くわけだ。 この重力の働きは傾きが増すほど強くなる。 この重力による回転を先ほどのベクトルで表すと下の図のような向きになる。
    コマの首振り運動
     そろそろ、分かってきたかも知れない。 つまり重力は、すでにコマが持っている回転に別の方向の回転を加えようとしているのである。 その結果どちら向きの回転になるかは、回転のベクトル同士を合成すれば分かる。
     具体的に図で示してみよう。 分かりやすいように、コマを大げさに傾けた状況を考えることにする。 人によってひもの巻き方が違うかも知れないが、右利きの人がコマをまわすと左回りになるのが普通ではないかと思う。 このとき、先ほどのルールで言えば、回転のベクトルは斜め上向きの矢印で表されることになる。
     これに、重力による回転を加えると、軸は傾きをさらに増す方向ではなく、それとは垂直方向に向きを変える事になるのがお分かりになると思う。
     このようなわけで、コマはいつまでも首振りを続けて倒れ込まないでいられるのである。
     コマ自体の回転が落ちてくると、重力による回転の影響の方が強く現われるようになり、次第に首振りは激しくなる。 これはコマで遊んだことのある人なら経験的によく知っている事だろうと思う。
    さらに専門的には
     重力による軸の回転をコマのもともとの回転と同格に扱ってベクトル合成するのはあまり正確な表現だとは言えない。 重力が軸を回転させようとする力を「重力による力のモーメント」としてとらえるべきである。
     力のモーメントとは、角運動量の微小な変化率であるという意味合いがあるのだった。 物体に加わった力のモーメントの大きさに応じて角運動量はなめらかに変化するのである。 それに応じて重力が軸を傾けようとする力のモーメントの方向もなめらかに変化することになり、いつまでも水平面内での軸ベクトルの回転が続くわけだ。
     専門の教科書ではこのことが微分方程式で表され、それを解いた結果が誇らしげに書かれているように見えるが、そんなに難しい事をやっているわけではないのだ。 もちろん教科書の著者も難しいこととは思っていないので、親切な説明は不要だと思っている。
    資料提供先→  http://homepage2.nifty.com/eman/dynamics/topspin.html
    http://homepage2.nifty.com/eman/dynamics/precession.html

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