公共輸送機関
十九世紀の中頃から、マンハッタンの街路は、馬や蒸気、後には電気によって動くさまざまな乗り物で混雑していた。交通渋滞そのものは、いまから百五十年も前にすでに日常的な出来事としてあった。十九世紀中葉の交通渋滞は、鉄道馬車、四輪荷馬車、辻馬車、自家用四輪馬車、その他様々な乗り物が一箇所に寄り集まっては、互いに怒声を浴びせあい、騒がしく立ち往生するようなときに起こった。ブロードウェイやフルトン・ストリートの混雑は有名で、しばしば一般大衆の笑い話の種にもなった。
新手の公共輸送手段は、全てがニューヨークから始まったというわけではなかったが、それらに名前をつけるあるいは逸話を残すことに、ニューヨークが独自の貢献をしたことは事実である。
●高速旅客輸送
今日の集団輸送時代、すなわち「高速旅客輸送」の時代は、電気を動力とした一八八〇年代の高架鉄道、一九〇四年以降の地下鉄とともに、ニューヨークから始まる。いずれの輸送機関も、車両を連ねることによって一度に何百人という乗客を運んだ。特に地下鉄は都市生活そのもののメタファーとして役立った。膨大な量の乗客、息苦しいまでの人ごみ、無名性、画一...