近代市民法は、個々人として自主独立の気概を持ち、自らが市民社会における主権者であることを自覚し、社会的な権利と義務を遂行するとともに、一般意思の実現のために行動することができる権利を明定している。この近代市民法を論及する意義はなにか。それは、近代市民法が現代の資本主義社会と法的安定性の本質に関する問題であるからだといえる。本問を論ずるは正にこの問題が解決に寄与するといえるのである。以下歴史的考察を踏まえ論及する。
かつて、近代国家以前においては、被支配者階級であるブルジョアジーを中心とする都市の手工業者や商人等の小市民、農民を含む第三階級(封建貴族に対する平民)が、国王・領主・家臣などにより権利支配されていた。これを中世封建制と呼び、現代のような資本主義社会はほぼ存在していなかった。これに対し、近代市民社会への変革に貢献したのが、イギリス名誉革命、フランス大革命、アメリカ独立宣言のような市民革命であった。ここでは平等に権利・義務の主体となりうる法律上の地位又は資格を有し、それを自由に行使できるように原則を立ち上げたものであり、法的安定性を要請するものであった。この原則は、近代法の基礎と...