EMS企業は、電子機器などの製造工程を請け負うサービスをアジア中心にグローバルに展開し急成長を遂げているが、以下では国際社会におけるEMSの果たす役割やその問題点についてバリューチェーン・商品連鎖といった観点から検討し、その上で国際社会学的なアプローチ・対抗策について考察していきたい。
Ⅰ.EMSと「バリューチェーン」・「商品連鎖」
バリューチェーンとは、ある産業の企業活動において各プロセスごとに付加される価値の分配構造に着目した考えで、そこではどのプロセスが最も価値の付加率、すなわち利益率が高いかということに最大の関心がある。換言すれば、生産活動のフローの効率化を国境横断的に追求していく視角である。EMS企業は、電子機器メーカーのバリューチェーンの中で最も利益率が低いプロセスである製造工程を請け負うことで、メーカーとの個々の企業を超えた利害の一致関係のネットワークを形成している。つまり、EMS企業はメーカーから購入した工場を拠点として、世界中の複数の企業からの注文を受けることにより工場の稼働率を安定させ、規格化された製品を量産することで利益を得ているというこ
VTR中で描かれたようなEMS企業は、電子機器などの製造工程を請け負うサービスをアジア中心にグローバルに展開し急成長を遂げているが、以下では国際社会におけるEMSの果たす役割やその問題点についてバリューチェーン・商品連鎖といった観点から検討し、その上で国際社会学的なアプローチ・対抗策について考察していきたい。
Ⅰ.EMSと「バリューチェーン」・「商品連鎖」
バリューチェーンとは、ある産業の企業活動において各プロセスごとに付加される価値の分配構造に着目した考えで、そこではどのプロセスが最も価値の付加率、すなわち利益率が高いかということに最大の関心がある。換言すれば、生産活動のフローの効率化を国境横断的に追求していく視角である。EMS企業は、電子機器メーカーのバリューチェーンの中で最も利益率が低いプロセスである製造工程を請け負うことで、メーカーとの個々の企業を超えた利害の一致関係のネットワークを形成している。つまり、EMS企業はメーカーから購入した工場を拠点として、世界中の複数の企業からの注文を受けることにより工場の稼働率を安定させ、規格化された製品を量産することで利益を得ているというこ...