「ジョン・ロックにおける子どもの教育論、特に習慣形成や賞罰法を中心に述べよ。」
イギリスに生まれ育ったジョン・ロックは、当時の市民階級にふさわしい教育の目的を、一人前の市民を育成することであると考えた。その教育思想は「紳士教育論」として有名である。そして、紳士を育成するための子どもの教育として展開されている特徴的な考え方が、「タブラ・ラサ」や「習慣形成」及び「賞罰」である。これらロックが考える子どもの教育論を順に考察する。
まず「タブラ・ラサ」(精神白紙説)とはどのようなものか。人間として生まれてくる子ども(赤ちゃん)は、生まれた時点ではまだ何の観念も持っていない白紙の状態であり、決して生まれながらにして心の中に何らかの観念や原理が刻まれた状態ではないという考えである。それでは、どのようにして心は観念を備えるようになるのか。ロックは、経験によって人間は観念を備えるようになると考えたのである。子どもの成長についても、教育や経験によってさまざまな知識や観念を獲得するようになるという経験主義的な考えを唱えた。まず感覚を通して知覚し、それら対象についての知識や観念が得られ、これらが真っ白な心...