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まず、平安時代の文献から国語史的特色を考察してみる。『日本古典文学大系』(小学館)より、『竹取物語』を例示する。
「いまはむかし、たけとりの翁といふものありけり。野山にまじりて竹をとりつつ、よろづのことにつかひけり。名をば、さぬきのみやつことなむいひける。その竹の中に、もと光る竹なむ一すぢありける。あやしがりて、寄りて見るに、筒の中光たり。それをみれば、三寸ばかりなる人、いとうつくしうてゐたり。翁いふやう、「我朝ごと夕ごとに見る竹の中におはするにて知りぬ。子になりたまふべき人なめり」とて、手にうち入れて、家へ持ちて来ぬ。
最初に指摘できることは、係り結びである。特に「なむ」を用いる係り結びは、平安時代の訓点本での事例はほとんど無いに等しい。しかし、「名をば、さぬきのみやことなむいひける」「もと光る竹なむ一すぢありける」の上記引用文意外にも、数多く見られる。
また、同様に文末に助動詞「けり」を用いることも稀である。「いまはむかし、たけとりの翁といふものありけり」と冒頭の一文でいきなり登場し、続く「よろづのことにつかひけり」でも使用されているように、「けり」で終止する文の数はかなり多い。し...