3.有機化合物の合成
3.1.1アセトアニリドの合成
実験実施日 2010/12/08(水)
実験の目的と主旨
アセトアニリドの合成を行うことでアミン誘導体の代表例であるアセチル体の合成法を習得する.また,得られた化合物の精製法として再結晶法と同定法を学ぶとともに,解熱剤であるアセトアニリドの実際の合成法・同定法を理解する.
実験概要
アセトアニリドの合成を行う.
アセトアニリドの再結晶を行う.
アセトアニリドの融点を測定し,純度検定を行う.
実験操作
▼実験に用いる試薬等の物性一覧
試薬名
分子式
分子量
使用量
物質量
沸点
融点
比重
備考
アニリン
C6H5NH2
93.1
5g
53.7mmol
184-186℃
-6℃
1.022g/mL
―
10w/v%塩酸
HCl
36.5
*1
53.7mmol
-84.9℃
-114.2℃
―
―
無水酢酸
(CH3CO)2O
102.09
*2
75mmol
118℃
―
1.084g/mL
―
酢酸ナトリウム
CH3CO2Na
82.03
6.15g
75mmol
―
58℃
―
風解性
アセトアニリド
C6H5NHCOCH3
135.2
―
―
305℃
115℃
―
―
塩化カルシウム
次亜塩素酸カルシウム
CaCl2
Ca(Cl0)2
111.0
143.0
0.1g
―
―
―
―
潮解性
潮解性
▼反応式
アセトアニリドの合成
100mLの三角フラスコに約5.0gのアニリンを精密に
量り取る.
これに当量(53.7mmol)の10%塩酸溶液を加えて溶解させ,室温まで冷却する.
次に無水酢酸を75mmol加え,
続いて酢酸ナトリウムを75mmol加える.
薬包紙で包んだゴム栓をして激しく撹拌する.
析出した結晶をろ過し,氷水で洗浄して乾かす.
再結晶を行い,着色があれば活性炭を用いて
脱色する.
ヌッチェで吸引ろ過を行い,結晶をろ取する.
ろ取した結晶は箱に入れて一晩風乾させる.
結晶の重量を測定し,融点測定を行う.
サンプル瓶に必要事項を記入し,提出する.
Runge Reaction
まずアニリン水溶液と次亜塩素酸カルシウム水溶液を作成する.
アニリン1滴と水10mLを混合する.
塩素化石炭0.1gと水10mLを混合する.
アニリン水溶液1mLを水100mLで薄めたものに次亜塩素酸カルシウム水溶液を加え,色の変化(紫色の呈色)を観察する.
実験装置の図
再結晶時の加熱装置 吸引ろ過装置
参考文献
The Merck Index TWELFTH EDITION
CHAPMAN&HALL Dictionary of Organic Compounds 6th EDITION
日本化学会編,化学便覧基礎編Ⅰ・Ⅱ(改訂第五版),丸善株式会社
3.有機化合物の合成
3.1.2 安息香酸のエステル化
薬学科 07A08006 熊谷文子
共同実験者 薬学科 07A08005 國枝章義
実験実施日 2010/12/09(木)~2010/12/10(金)
実験の目的と主旨
カルボン酸の誘導体合成反応としてFischer法による安息香酸のエステル化を習得する.この反応を通して化学平衡についての理解を深めるとともに,反応生成物の精製法として分配抽出および蒸留操作を習得する.
実験概要
安息香酸メチルの合成を行う.
安息香酸メチルを分配抽出によって精製する.
抽出した安息香酸メチルを常圧蒸留法により生成する.
実験操作
▼実験に用いる試薬等の物性一覧
試薬名
分子式
分子量
使用量
物質量
沸点
融点
比重
備考
安息香酸
C6H5CO2H
122.12
10.0g
81.9mmol
―
122.5℃
1.321g/mL
―
メタノール
CH3OH
32.04
30mL
―
64.7℃
―
―
―
濃硫酸
H2SO4
98.1
3mL
―
―
―
0.7866g/mL
―
酢酸エチル
CH3CO2C2H5
88.11
130mL
―
76.82℃
―
0.9245g/mL
―
重曹水
NaHCO3
84.0
100mL
―
―
―
―
―
飽和食塩水
NaCl
58.4
20mL
―
―
―
―
溶解度26.4g(20℃)
無水硫酸
マグネシウム
MgSO4
120.4
―
―
―
―
―
乾燥剤
安息香酸メチル
C6H5CO2CH3
136.15
―
―
198-200℃
―
1.094g/mL
―
▼反応式
安息香酸メチルの合成
約10.0gの安息香酸を精密に量り,100mLのスリのナスフラスコに入れる.
これにメタノール30mLを加え,
次に濃硫酸3mLを加える.
ジムロート冷却管を付けて撹拌しながら加熱還流する.
還流し始めてから30分経過したところで,TLCで反応の進行をチェックする.
酢酸エチル:ヘキサン=1:10で展開し,UVで確認.
水50mLと氷を入れた分液ロートに反応液を移し,酢酸エチルで二回抽出する.(90mL,40mL)
合わせた酢酸エチル層①を,以下の反応スキームによって処理する.
酢酸エチル層①
水30mLで2回洗浄する→水層(A)
↓
酢酸エチル層②
飽和重層水50mLで二回洗浄する→水層(B)
↓
酢酸エチル層③
飽和食塩水20mLで洗浄する→NaCl水
↓
酢酸エチル層④
乾燥した300mL三角フラスコにろうとを使って移し,
無水硫酸マグネシウムで乾燥させる
ひだ付きろ紙を使って300mLのスリのナスフラスコに自然ろ過する.
ろ液の入ったナスフラスコの酢酸エチルをエバポレーターで減圧留去する.
留去が終わったら薬包紙でふたをして翌日まで保存する.
濃縮した残渣に沸騰石を数個入れ,常圧蒸留装置を用いて金網で加熱する.
最初は弱い炎で酢酸エチルを留去する.
酢酸エチルが出終わったら,リービッヒ冷却管の水を抜き火を強めて昇温していく.
50mL三角フラスコの重さを予め量っておく.
これに沸点約190度以上の留分を集める.
ナスフラスコの中に2~3mL程度残し,
バーナーの火を止める.
集めた留分の重さを量る.
収量・収率を計算する.
TLCチェックを行い(酢酸エチル:ヘキサン=1:10),
安息香酸メチルの純度を確認する.
得られたサンプルのうち3.31gをサンプル瓶に量りとり,きっちりふたをしておく.
次の実験で使う要乾燥のガラス器具を乾燥機に入れる.
塩カル管×2,50mL等圧滴下ロート,
ジムロート,100mL三角フラスコ,
300mLナスコルベン,撹拌子(2cm),平栓×2,
20mLメスシリンダー,ピペット×3,サンプル瓶×2
実験装置の図
加熱還流装置 減圧留去装置
常圧蒸留装置
参考文献
The Merck Index TWELFTH EDITION
CHAPMAN&HALL Dictionary of Organic Compounds 6th EDITION
日本化学会編,化学便覧基礎編Ⅰ・Ⅱ(改訂第五版),丸善株式会社
国立天文台編,理科年表第79冊,丸善株式会社,2005,1022p
3.有機化合物の合成
3.2 有機金属を用いた炭素・炭素結合形成反応―Grignard反応(トリフェニルメタノールの合成)―
薬学科 07A08006 熊谷文子
共同実験者 薬学科 07A08005 國枝章義
実験実施日 2010/12/13(月)~2010/12/14(火)
実験の目的と主旨
炭素・炭素結合を形成する上で非常に有用な反応であるGrignard反応を,有機マグネシウム試薬を用いて実習し,その基本的実験法を学ぶ.また無水反応について学ぶ.
実験概要
金属マグネシウムとブロモベンゼンからGrignard試薬を調整する.
安息香酸メチル1分子に対して二分子のGrignard試薬を反応させトリフェニルメタノールを合成する.
トリフェニルメタノールの精製を行う
実験操作
▼実験に用いる試薬等の物性一覧
試薬名
分子式
分子量
使用量
物質量
沸点
融点
比重
マグネシウム
Mg
24.31
1.22g
50.2mmol
―
―
―
臭化ベンゼン
C6H5Br
157.01
8.05g
51.3mmol
―
―
1.4952g/mL
安息香酸メチル
C6H5CO2CH3
136.2
3.13g
23.0mmol
198-200℃
―
1.094g/mL
ジエチルエーテル
C2H5OC2H5
74.12
35mL
40mL
―
34.48℃
―
0.7077g/mL
10%硫酸
H2SO4
98.1
30mL
―
110℃(水との共沸点)
―
―
飽和食塩水
NaCl
58.4
20mL
―
―
―
―
硫酸マグネシウム
MgSO4
120.4
―
―
―
―
―
n-ヘキサン
n-C6H14
86.18
25mL
―
68.7...