日本の近現代思想 2008--
「間柄」について
<「間柄」とは何か>
和辻哲郎の著書『倫理学』の序論に次のような記述がある。
倫理問題の場所は孤立的個人の意識にではなくしてまさに人と人との間柄にある。
和辻によれば、「人間」という言葉はもともと「よのなか」「世間」を意味するものであったが、それが転じて「人」を意味するようにもなった。和辻は「倫理をたんに個人意識の問題とする近世の誤謬から脱却」すべく、倫理学を「人間の学」として規定しようとした。「近世」とはすなわち西洋のことであり、これらの記述は「個」「個人」を中心とする西洋哲学の伝統を批判したものでもある。(「西洋」という括りも漠然としていて曖昧なものだが、ここでは「日本」に対立するものとして便宜上「西洋」という言葉を用いることとする。)
和辻は、「個」としての人間を捉える西洋哲学に対し、「間柄」としての人間に着目した。「人間」とはもともと「人と人との間」を意味していた、というところからその議論は始まる。彼は議論を展開する際に「間」ではなく「間柄」という言葉をつかっているが、「間柄」の「柄」とは一体何だろうか。
「柄」という...