文学者倉塚曄子の同著を読んでの批評です。文学的視点ではなく、民俗学の立場から述べてあります。文字数も多く、完成度は高いと思われます。
『巫女の文化』倉塚曄子著/平凡社(1979)~第四章「兄と妹の物語」を読んで
初めに
本レポートを書くにあたって、まず本書の第四章「兄と妹の物語」の本文に沿ってその内
容主旨を述べ、それに伴う批評を後に述べる。そしてその発展として、琉球(沖縄)における
ヒメヒコ制についても論点を置くことにする。
Ⅰ.内容主旨
(1) 兄と妹の絆
沖縄では霊能で結ばれた特殊な兄妹関係が歴史時代を通じて今まで保たれ続けてきた。
しかし本土においてもそれは記紀に残されてあるように、歴史時代の始まりの頃までは存
在していたことが分かる。
記紀に示されるいくつかの特殊な兄妹関係から、妹が兄の力になろうとした点に共通点
を見出すことができ、これらの妹と兄の絆の強さというのは人類学的(p.192 ℓ9)、系譜的に
も示されている。そして、この絆を軸として成立したものがヒメヒコ制(p.193 ℓ9)といわれ
るものであり、つまりは政治的、宗教的支配権の兄妹(姉弟)による分掌体制(p.193 ℓ8)であ
る。ヒメヒコ制の長い伝統の線上に実現したとみられるヒミコとその宗女壱与による統治
はその一典型として挙げることがで...