わが国において、1990年代に至ってあらわになった「景気の自律的拡張のメカニズム」と「信頼の構造」とが壊されたという事態について、1)その実態を具体的に明らかにし、2)それをもたらした「源流」となった「構造改革」の思想・政策の核心的内容を説明せよ
1)「景気の自律的メカニズム」と「信頼の構造」の破壊
景気とは、「経済活動全般の水準」と定義され、ある程度のスパンで上向きだったり下向きだったりと波を打つ。その波をもたらす原因には大きく三つの力が関係している。一つ目は資本主義経済の本質から生まれる力で、市場経済における需要と供給のバランス関係がそれにあたる。二つ目は外部からの力によるもので、たとえば日本経済に多大な影響を与えているアメリカや中国が、景気が悪化すると、輸出が不振になり日本の成長率は止まる。そして三つ目は政策の力である。政府は、経済政策でもって景気をある程度コントロールしようとする。不況時における公共事業の拡大や減税、また金利の引き下げなどはその最たる例である。
こうして景気は波打つのだが、テキストにもあるように、1990年代半ばまでは、不況時に景気浮揚政策をとる、あるいは、...