人間行動学概論レポート
「にぎわいを呼ぶイタリアのまちづくり」書評
本書は、イタリアにおける「都心を生かすまちづくり」に関して、都市計画や文化財保存、都心居住や観光といった面から紹介している。イタリアだけではなく、世界中の先進国において、都市の中心市街地の衰退が問題とされるようになって久しい。それでは、本書で示されているイタリアの都市再生の方法、そのメリットとデメリットを見ていこう。
1970年代、都市衰退に対してとられた施策は都市再開発であった。その結果、大規模オフィスやホテルといった大資本の都心回帰は成功した。しかし、商業業務施設が中心である都市再開発であったために住民の都心回帰は進まず、その面では都心の空洞化はさらに加速された。一方、イタリアでは、都市再開発という手法を選択せず、既存建物の保存・修復によって都市再生が進められた。また、既存建物の用途変更に対しては批判の声が大きかった。つまり、居住用途であった既存建物は、修復された後も住居としての役割を果たすこととなったのであった。
このことによるメリットとは、歴史的景観が保護できること、および都心住民もその歴...