社会保障

閲覧数1,641
ダウンロード数34
履歴確認

    • ページ数 : 2ページ
    • 全体公開

    資料紹介

    社会保障
    「過労死と労災保険について論じなさい」

    資料の原本内容

    社会保障
    ③「過労死と労災保険について論じなさい」
     用語に関して述べると、労災保険とは、労働者災害補償保険が略されたものである。労災保険と雇用保険をまとめた総称が、労働保険である。
     労災保険は、業務災害と通勤災害による傷病等に対する補償を行なう制度である。労災保険料を財源とされる。制度の枠組みは、労働者災害補償保険法において定められている。
     労働者災害補償保険法は、1947年に施行された。その後、労災保険制度は、たび重なる改正により、適用事業の拡大、給付水準の引き上げ、通勤災害保護制度の導入、労働福祉事業の創設などが行なわれ、これまで制度の充実が図られてきた。
     最近では、2000年の改正において、二次健康診断等にかかる給付の創設がされた。業務による過重負荷に伴う脳・心臓疾患の発症の予防を的確に行なうため、一定範囲の健康診断や健康診断結果に基づく保健指導が労災保険制度の給付として位置づけられることとなった。これは、近年、業務での過重負荷により脳血管疾患や虚血性心疾患などを発症して、障害状態に至り死亡する人が増加傾向にあることを受けての対応である。このような脳・心臓疾患による死亡は、「過労死」と呼ばれるものであり、職場生活におけるストレスの増大が指摘されるなか、社会的関心を呼んでいる。
     脳・心臓疾患については、労働安全衛生法で定める定期健康診断により、発症の原因となる危険因子の存在を事前に把握することが可能である。また、適切な保健指導により発症を予防することが可能である。事業主には、定期健康診断を行なうことにより、「過労死」を防止することが求められるようになった。
     労災保険の保険給付としては様々なものがあり、そのなかに二次健康診断等給付がある。これは、脳・心臓疾患に関連する一定の項目について異常の所見があると診断された場合に、労働者の請求により、二次健康診断および特定保健指導が給付されるという内容である。二次健康診断は、脳血管および心臓の状態を把握するために必要な検査であり、特定保健指導は、二次健康診断の結果に基づき、脳・心臓疾患の発症の予防を図るため医師等により行なわれる保健指導である。
     業務災害の認定の業務は、被災労働者からの申請に基づき、厚生労働省の地方組織である労働基準監督署が行なっている。労働災害は、労働者が使用者の支配下にある状態に起因するものである。業務災害に基準は法律には規定されておらず、厚生労働省の通達や個々の認定事例の積み重ねをもとに認定される。
     脳・心臓疾患の認定基準の概要としては、以下のとおりである。①脳・心臓疾患は、血管病変等が長い年月の生活の営みのなかで形成され、進行および憎悪するといった自然経過をたどり発症する。②しかし、業務による明らかな過重負荷が加わることによって、血管病変等がその自然経過を超えて著しく憎悪し、脳・心臓疾患が発症する場合がある。③脳・心臓疾患の発症に影響を及ぼす業務による明らかな過重負荷として、発症に接近した時期における不可のほか、長期間にわたる疲労の蓄積も考慮する。④業務の過重性の評価にあたっては、労働時間、勤務形態、作業環境、精神的緊張の状態等も具体的かつ客観的に把握、検討し、総合的に判断する必要がある。
     2007年度における、脳・心臓疾患の労災補償状況としては、請求件数は931件、支給決定件数は392件である。このうち「過労死」としては、請求件数は318件、支給決定件数は142件である。割合としては、半数弱が労災認定されているということとなる。脳・心臓疾患の請求件数は、この数年間増加傾向にある。「過労死」の請求件数は、ほぼ横ばいの状況である。
     脳・心臓疾患のほかに、精神障害の発症も労災補償の対象となる。鬱病や重度ストレス反応等の精神障害では、病態として自殺念慮が出現する蓋然性が高いとされていることから、業務による心理的負荷によって精神障害が発病したと認められる者が自殺を図った場合には、業務起因性が認められることとされている。
     2007年度における、精神障害等の労災補償状況としては、請求件数は952件、支給決定件数は268件である。このうち自殺としては、請求件数は164件、支給決定件数は81件である。精神障害等の請求件数は、この数年間大きく増加傾向にある。自殺の請求件数については、やや増加傾向にある。

    コメント0件

    コメント追加

    コメントを書込むには会員登録するか、すでに会員の方はログインしてください。