福沢諭吉の教育思想について、著者をとりあげながら説明しなさい。 1693文字
日本において近代教育は「西洋」からもたらされ、西洋モデルの内在化、それに伴う諸問題との思想的格闘を演じた典型的人物が福沢諭吉である。福沢の教育思想の基軸をなしたものが、西洋をモデルとする教育認識の枠組みであった。福沢の独立論や文明論は、既存の意識体系の解釈学としてではなく日本社会の将来像を合理的に展望するための理論的枠組みとして機能した。福沢の教育思想について、説明していく。
教育の目的について、「教育の目的は人生を発達して極度に導くに在り」と、著者『教育論』の中で語っている。ここでいわれる「人生」とは、「心身の働き」という意味合いを有している。また、福沢の視界には「天下奉平家内安全を以て人生教育の極度とする」と個人の発達と社会全体の平安とが連続的関係において結ばれるとする認識が存在していた。個人の発達と社会全体の平安という教育目的の統合が、独立論を前提に組み立てられている。
教育の意義として、「教育とは人を教え育つると云う義にして、人の子は生まれながら物事を知る者に得ず」や「凡そ人の子たる者は誰かれの差別なく、必ず教育の門に入らざるに得ず」とは、教育の意義と必要性に関する福沢...