地理的表示制度の意義―EUを事例として―

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    資料紹介

    ……そもそも「地理的表示」とは、原産地域の特徴と関連した固有の品質や社会的評価を持つ農産物や食品加工品について、その原産地域を特定する表示であり、有名なものに、「パルミジャーノ・レッジャーノ」や「シャンパン」などがある。EUにおける地理的表示制度はPDO(原産地呼称制度)、PGI(地理的表示保護)として1993年に施行された。その対象は、ワイン・チーズ・ハム・ソーセージ・オリーブ・ビール・パン・果物・野菜など多岐に渡る。このような制度は、ヨーロッパにおいて地域ごとに特徴を持つ農産物や食品を保護し、気候や土壌を含めた地域文化を蓄積・継承することが目的である。特に、ワインの地理的表示制度は長年にわたって構築されてきた。フランスのAOC(原産地呼称統制制度)はEUの地理的表示制度のモデルとされたものである。
     PDOとPGIと比較したとき、PDOの方がより地域との結びつきが強い。というのもPDOに認定されるには、品質等がその地域の地理的、さらには人的環境と強く結びついたその土地ならではの品質を持った他の地域では生産不可能な生産品であり、かつ原材料の生産も含めた生産工程のすべてがその土地で行われている必要があるからである。対してPGIは生産工程の一部が当該地域で行われていれば認定されることになっている。つまり両者を分かつのは、「生産品がどれだけ特定の地域と関わりを持っているか」という点であり、その点でPDOの方がPGIよりも認定基準が厳しく、生産品に付与される地域性は強い……。

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    地 理 的 表 示 制 度 の 意 義
    ― E U を 事 例 と し て ―
    1.食の多様性の喪失
    大量生産、大量消費の現代社会、世の中の数多くのモノが標準化され画一化され生産されている昨今。
    安定した品質と安定した供給は今日も世界の需要を満たしている。もちろんそれは農産物も例外ではな
    い。魚介類の養殖や野菜の促成栽培など、生産性や効率性を重視した生産方法が数多く存在する。しか
    しその反面、このような農産物の均質的・画一的生産は農産物そのものの均質化・画一化を生んでしま
    う。つまり、たとえ異なる土地で農産物を栽培したとしても、生産性や効率性のために同じ栄養を含む
    土を使い、気候の影響を受けない室内で育てたとすれば、その味も見栄えも風味も大差ないものになっ
    てしまうのである。これが意味するのは、農産物に内在する地域性が希薄化しているということである。
    その証拠に、私たちが普段スーパーで買い物をする際に商品の産地をどこまで意識しているであろうか。
    長い間、農産物は多様な地域環境の中で栽培されてきた。京野菜のように多様な品種と生産方法がそ
    の地域に受け継がれ、地域独特の風味や味、食感を持つ...

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