【日大通信】2019~2022年度課題 漢文学Ⅰ 分冊1

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     孔子とは、春秋時代中国の思想家・哲学者であり儒家の始祖である。名は丘、字は仲尼という。孔丘というのが正式な姓名であり、孔子というのは尊称、つまり「孔先生」という意味である。

     孔子の理想とするところは、かつて周が殷を打ち破り天下を統一したころの、整然たる知性のもたらす、よい香りがするような穏やかな文化の復興であった。そこで孔子は、周の文化を創設した魯の国の始祖、周公旦を尊敬し理想とした。
    孔子と弟子たちの言行録が『論語』と呼ばれる。孔子がなくなった後、長い年月と多くの弟子たちの手を経て、漢の時代にようやく、現代に伝わるような書物の原型が出来上がった。

     『論語』を資料として孔子について考えてみたい。孔子の思想は、本来すぐれて宗教的である。孔子の思想が育まれた背景には、元来周の部族神的存在で建国の理念でもあった「天」のはたらきがある。孔子は理論的・精神的、その両面において「天」をよりどころとして、思想を展開していた。

    孔子がよりどころとまでしていた「天」の大もとは殷の「上帝」である。紀元前に「夏」という伝説の王朝を倒して中国全土を平定としたといわれる「殷」は約五百年にわたり、高度...

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