孫過庭の『書譜』の中で「書作は本来どのようにあるべき」と語っているかを詳述しなさい。
孫過庭の『書譜』は伝統的な書論である。『書譜』の二巻六篇の論の展開を引用しつつ、「心手双暢」と「五合五乖」について触れ、「書作とは本来どのようにあるべき」と語っているかを詳述する。
孫過庭の『書譜』は、草書の作品として有名であるが、その内容は王羲之を中心とした四賢(王羲之、張芝、鍾繇、王献之)の優劣論や六朝時代以来の書論についての批評、実作者としての体験からくる技法論など多岐に亘っている。孫過庭の見識の高さが随所に盛り込まれ、唐代を代表する書論である。彼は、基本的には六朝時代の伝統を継承しているが、六朝の書論が二王を中心とした四賢の優劣論や書体論が主流を占めるのに対し、理論と実作の両面から論述した総合的な内容となっている。
(『改訂 書道理論』加藤達成 編著(佛教大学)より)
『書譜』の文章の体裁は、駢文でしかも典故を多用しているため理解が難しいとされている。孫過庭の真蹟本が台湾の故宮博物館に現存している。ただし、中間の二個所で合計一九六字を欠損しているが、それらは刻本で補うことができる。『孫...