私は額田王と大海人皇子の贈答歌のうち二一の歌に絞って、二人の関係、歌に込められた想いを調べた。以前は愛し合っていた二人だが、額田王は天智天皇に仕えてしまった。大海人皇子はどのような気持ちでこの歌を返したのだろうか。また、この歌はなぜ雑歌に分類されているのかを考えた。
二一 紫草のにほへる妹を憎くあらば人妻ゆゑにわれ恋ひめやも
口語訳は紫草のように美しいあなたを憎いと思ったら、人妻であるのに、私はかくも恋しく思うだろうか、となる。
まずは、原文の語釈を行ない、私の見解を述べていく。始めに「紫草の」について調べた。この原文では「紫草の」で「むらさきの」と読んでいるが、「紫の」とする原文もある。「紫」は植物としてのムラサキであり、色名としての紫とされる。また昔から根は紫色の重要な染料とされていた。
私は額田王と大海人皇子の贈答歌のうち二一の歌に絞って、二人の関係、歌に込められた想いを調べた。以前は愛し合っていた二人だが、額田王は天智天皇に仕えてしまった。大海人皇子はどのような気持ちでこの歌を返したのだろうか。また、この歌はなぜ雑歌に分類されているのかを考えた。
二一 紫草のにほへる妹を憎くあらば人妻ゆゑにわれ恋ひめやも
口語訳は紫草のように美しいあなたを憎いと思ったら、人妻であるのに、私はかくも恋しく思うだろうか、となる。
まずは、原文の語釈を行ない、私の見解を述べていく。始めに「紫草の」について調べた。この原文では「紫草の」で「むらさきの」と読んでいるが、「紫の」とする原文もある。「紫」は植物としてのムラサキであり、色名としての紫とされる。また昔から根は紫色の重要な染料とされていた。「紫草の」は集中二例。「紫の」も集中二例であった。「紫の」と記されている場合、“枕詞”として捉える場合と“紫野”として捉える場合があるということに気づいた。「紫野」で調べてみると、現在の京都市北区の地名であり、紫草の生えている野を表している。また『答えの歌には前の歌の詩句を取ることが普通である(...