択一的競合における条件関係の有無について、問題の所在を明らかにし、学説の議論状況を分析して検討する。
問題の所在
条件関係とは、「あれなくばこれなし」という関係、つまり、ある行為Aがなければ結果Bは発生しなかっただろうという関係のことを指すのが従来の一般的見解で、この関係が欠ける場合には因果関係は肯定しないとされてきた。例えば、拳銃で人を殺害した場合、拳銃で撃たなければ弾丸による死亡結果は発生し得ない。条件関係の有無は、拳銃で撃つという実際の行為を取り除き、別の行為に置き換えて考え、同じ結果が発生したかどうかを問題としてきた。例に挙げた弾丸による死亡が、別の行為でも可能であるならば、条件関係が否定され、ひいては構成要件の要素としての構成要件該当性が否定されることになる。この考え方を仮定的消去法という。
仮定的消去法による判断は、実際の行為も結果も具体的に把握されている必要がある。前例の拳銃殺人の場合、行為者が拳銃で撃たなくとも、「被害者はいずれ寿命で死亡したのだから、条件関係が否定される」ということは出来ない。「寿命による死亡」はいずれ起こるが、いつ、どこで、何が原因でといった具...