書評
『カール・ポラニー―市場自由主義の根源的批判者』
本書は、日本大学経済学部教授 野口建彦氏の経済史研究の成果をまとめたものである。全3部、6章からなり、ポラニーの生涯と業績、全3部から成る『大転換』の概要と骨子の紹介、そして『大転換』の功績とその考察の欠如の指摘から構成されている。
第1章「ポラニーの生涯と業績」は2部構成になっており、1ではポラニー家の詳細を、2では文字通り、ポラニーの生涯と業績が記されている。ユダヤ人であるポラニーの人生は平坦なものでなく、その紆余曲折な人生を紹介することによって、『大転換』がどのようにして誕生していったかを知るうえで必須の章であると感じた。
第2章「市場経済を考える国際システム―第Ⅰ部の骨子」では、二つの章から構成される『大転換』の第Ⅰ部「国際システム」の概要が展開される。第1章「平和の百年」,第2章「保守の二〇年代,三〇年代」によって自己調整的市場原理と保護主義・帝国主義の関係や自己調整的市場のユートピア性などが明らかにされている。ポラニーの考えだけでなく、最大の論敵であったミーゼスの考えや新古典派経済学との差異が示されているので...