契約締結上の過失、特にその諸類型を踏まえた要件と効果につき論じなさい。
1、契約上の過失とは
契約締結上の過失は、契約準備・成立過程においてその交渉当事者の一方的有責行為によって相手方に損害が発生した場合、信義則(民法1条2項)に基づき契約責任と同様の法的保護を認める法理である。契約の種類については、次の類型に分けられる。
第一に、当事者が締結した契約が原始的不能であったため、契約が無効となり損害が発生する場合(原始的不能型)、第二に、契約準備段階で「契約の締結は確実」だと思われていたにもかかわらず、相手方の一方的な理由で契約交渉が破棄され、契約が不成立に終わり、損害が発生する場合(契約破棄型)、第三に、契約は有効に成立したものの、契約締結交渉の際に説明や情報提供が不十分・不適切であったために望まない契約をさせられたとして損害を主張する場合(望まない契約型)である。
2、要件と効果
各類型の要件と効果について、以下検討する。
(1)原始的不能型の場合
建物の売買契約をしたところ、目的の建物が契約締結前に焼失していたという場合、契約は原始的不能であって、契約上の効力は生じない...