地域福祉の理論と方法

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    『地域福祉の理論と方法①』
    「地域福祉の基本的考え方について述べなさい」

    資料の原本内容

    『地域福祉の理論と方法①』
    「地域福祉の基本的考え方について述べなさい」
     地域福祉に求められる基本的考え方は、社会福祉を必要としている人が地域住民として生活できるようにし、地域という面で(点と点を結ぶ線でつながっているだけではなく)、生活全体を支えていくということが中心である。
     地域福祉とは、自立生活が困難な個人や家族が、地域において自立生活できるよう必要なサービスを提供することである。そのために必要な環境醸成を図るとともに、社会資源の活用・社会福祉制度の確立・福祉教育の展開が総合的に行われる。
     2000年に、社会福祉法のなかで、地域福祉ということばが初めて登場した。そこでは、地域福祉の推進に努めなければならないことが記されている。その主体としては、①地域住民、②社会福祉を目的とする事業を経営するもの、③社会福祉に関する活動を行うものと、大きく3つに分けられ、従来よりも広範囲となった。近年、地方分権化が図られ、社会福祉の分野においても地域福祉の推進が法制化されたのである。
     現在は、地域福祉が社会福祉の主流となる流れであるが、これに至る歴史的経緯を簡単に述べる。戦後、日本経済は急成長を遂げ、社会は豊かになったが、地域は大きく変化し、数多くの社会福祉問題が発生した。1960年代から70年代にかけては、アメリカにおけるコミュニティ・オーガニゼーションの考え方をくみ、地域社会化が理念とされた。また、社会福祉施設が多く作られた。80年代になると、在宅福祉の比重が高まる機運となる。これは経済が低成長となり、福祉予算の縮小によるところが背景としてある。また、北欧で生まれたノーマライゼーションの理念の浸透にも影響を受けている。90年代には、住民参加・利用者主体・地方分権といった理念が中心となる。これが、2000年代の地域福祉の理念につながっていく。
     近年、社会は経済的に豊かになったが、経済のグローバル化などによって社会は複雑化し、これにうまく適応できず取り残されている人が増えている。そして、貧困層の拡大、引きこもり・ニートの増加、中高年の孤独死、高い自殺率、児童虐待といった社会問題が噴出している。こういった社会問題に対して、地域からの支援が強く必要とされるであろう。今後、地域福祉の理念はますます重要視されると思われる。
     2008年の厚生労働省による「これからの地域福祉のあり方に関する研究会」報告では、公的福祉サービスでは対応しきれていない課題として地域における多様な福祉課題以下の4つの地域における福祉課題を挙げる。①公的な福祉サービスだけでは対応できない生活課題(軽易な手助けなど制度では拾いきれないニーズ、制度の谷間にある者、問題解決能力が不十分で公的サービスをうまく利用できない人、孤立死等身近でなければ早期発見が困難な問題など)、②公的な福祉サービスによる総合的な対応が不十分であることから生じる問題(複合的な問題のある事例など)、③社会的排除の対象となりやすい者や少数者、低所得の問題(ホームレス、外国人、刑務所出所者など)、④地域移行という要請(地域生活に移行する障害者を支える仕組みが必要)。

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