聴覚障害教育において現れる「9歳の壁」の具体的事例(教科面・心理面など)とそれが生じる理由を簡単にまとめた上で、現在の「聴覚口話法」(聴覚活用・発声・読話など)の「効果」と「限界」、ならびに「手話法」(手話使用)の「効果」と「限界」のそれぞれをどう捕らえるかをまとめよ。また、インクルーシブ教育への志向の中で、また超早期に聴覚障害が発見されるようになった状況の中で、大切にされるべき点について考察せよ。
「9歳レベルの峠」という言葉は、聾学校校長の荻原浅五郎が1964年に使い始めたといわれているが、教育における「峠ないし壁」の存在することはそれ以前から指摘されていた。
森原都1 によると、9,10歳時は成長の質的転換期に当たるとされ、認識面では、計画性と見通しを持った行動が可能となり、例えば「A点とB点の類似点や共通点」が考えられるようになる。教科面では、話し言葉から書き言葉へ移行することが可能になり、また掛け算や割り算を使う思考が可能になる。絵においては知的リアリズムから視覚的リアリズムに移行する。人格面では価値が多面化する、自分や他人・障碍者などに対する見方が変容する、などの数々の特徴...