寅さんシリーズで知られている監督・山田洋次は私が尊敬する進歩的な文化人だ。初めてその名前を聞いたのは小学校2、3年の頃だっただろうか。映画「学校」を親と観に行った時だった。まだ幼かった私には迫力がなく面白味のない平凡な映画だった。しかし、そこには他の派手な映画にはない何かがあった。ほのぼのと温かく心に伝わってくるものがあるような気がしたのだ。
世界的大ヒットとなった映画「インディペンデンスデイ」を覚えているだろうか。UFOでやってきた邪悪な生命体と交渉が決裂し、大統領は叫ぶのだ。「核攻撃だ!核で皆殺しにしろ!」と。山田洋次は映画館でこの言葉を聞いた時、驚いて腰が抜けそうになったそうだ。「ハリウッド映画に、かくも無神経に核爆弾が使われる状況をどのように理解すればいいのか。何故、世界唯一の被爆国である日本の観客は核爆発のシーンで一斉に席を立つという行動にでなかったのか。戦争の人間的悲惨について思いを馳せることができた日本人のあの想像力と優しさはどこへ行ってしまったのか」と山田洋次は被爆国の文化の有り様を提起した。
核兵器もやむを得ないという言葉は日本人だけは決して使ってはいけないものだ。そ...