中学校1年生の3学期に学習されている文学教材『トロッコ』(芥川龍之介)を、詳細に教材分析し、その構造や工夫を明らかにしなさい。
芥川龍之介『トロッコ』には少年良平の、トロッコに対する強い憧れと、その挫折からくる苦い思いが優れた描写力で描かれているといえる。
主人公良平の八歳という年齢は、一般に少年期への転換期であると考えられており、小学校入学などを通じ、現実の世界というものに触れ始める時期である。
そのような良平の目の前にトロッコがあらわれる。おもちゃの汽車は、精巧ではあるが絶対に安全であり、部屋の中に設置されたレールの上しか走らない。対して現実のトロッコは、絶対に安全などということは当然なく、こういった意味で良平にとってトロッコは現実そのものであった。だからこそトロッコはこの上なくまぶしく光り輝き、強い憧れを少年に抱かせるのである。
トロッコは良平の目の前に現れた、初めての現実であったといえる。端的に言うと、良平はトロッコを目の前にして初めて、現実を認識する能力を持ったのである。
憧れの強さは、「土工になりたいと思うことがある。」「せめては一度でも、土工といっしょにトロッコへ乗...