2011年度印度哲学のA評価レポート、設題1.2のセットです。
教科書を中心にまとめました。
第一設題:ウッダーラカ・アールニとヤージュニア・ヴァルキヤのĀtman説について
第2設題:転変説、積集説、縁起説について
第一設題:ウッダーラカ・アールニとヤージュニア・ヴァルキヤのĀtman説について
参照:金倉圓照著『インド哲学史』第1章-第4章
1.Ātmanとは何か
アリヤン人種はインダス文明の栄えた後に、インドに侵入してきて原住民を支配した。そのアリヤン人種がインドに移住して最初に産出した文学がヴェーダである。ヴェーダの語は、もとは「知識」という意味であるが、とりわけ神聖な宗教上の知識をあらわし、さらに転じて知識の源泉として一定の聖典を表すものとなった。
ヴェーダの終に位する秘教密義の聖典であるウパニシャド(もとは「近くに座る」の意味)では、その哲学的主題として宇宙の本体に関する問題の討議があげられる。これは世界根源の探求、宇宙の統一的把握に対する古来の思索と密接な関係を持っている。ここで提示される宇宙の統一の原理はブラフマン(梵)と名づけられる。このブラフマンはもともと神秘的な威力を示す言葉で、マントラの知識を有するバラモンに内在し、諸神万物を背後から動かす力であると考えられた。
こうした思想の背景には、祭式の万能化とそれを司るバラモンの神聖化があげられる。時代の推移とともに、ヴェーダに端を...