(1) 譲渡担保の法的構成について
まず、譲渡担保は、取引慣行上の必要から生成・発展してきた制度であるためその内容が必ずしも明確ではなく、その上、形式と実質に違いがある。このために市場取引の発展のための制度であるにもかかわらず、取引の安全の面から見ると非常に危険な制度である。
しかし今日、譲渡担保制度は経済社会・取引社会になくてはならない重要なものであるため、できることならば、立法によって、取引の安全保護のために、譲渡担保制度の内容と、その担保としての実質を公示できる制度を設けるべきであるが、そのような制度を設けることが、かえって、譲渡担保の利点である、簡易・迅速に担保目的物の価値を把握し、債務の弁済に充当できる点を損なうおそれがあり、そうなると譲渡担保制度自体に意味がなくなってしまう可能性もある。
このことから、譲渡担保の内容については、あるいは公示方法についても、これまでのように判例・学説により確定されていくしかないと思われる。
では、譲渡担保の法的構成についてだが、その形式と実質とに違いがあるため、形式を重視するか実質を重視するかで、見解は大きく分かれ、その見解によって個別具体的な問題への対応にも大きく差異が生じることになる。
本判決(平成6年判決)は基本的に昭和62年判決を踏襲し、譲渡担保の権利の移転の形式を重視しているものである。しかし、譲渡担保の目的はあくまで債権の担保であって、そのことを承諾しているはずの当事者にまで、判例で形式重視の解釈をすることにより、その目的を無視することを認めることは妥当ではない。その根拠は、信義則違反(1?)に求めることができるであろう。
よって、譲渡担保はその実質を重視して捉えるべきであると解する。
譲渡担保と受戻権 groundnut
基本判例21 譲渡担保権者による目的不動産の譲渡と債務者の受戻権
[最高裁平成6年2月22日第三小法廷判決 民集48巻2号414頁、判時1540号36頁]
Ⅰ事件の概要
③不法占有 本件土地・建物
譲受人X Y債務者・譲渡担保設定者
④明渡し ① 本件土地
前所有者
②譲渡担保権設定契約
⑤贈与
A債権者・譲渡担保権者
①昭和31年10月ころ、Yは土地(松山市祇園町、宅地109.09平方メートル)を前所有者から買い受け、昭和32年2月ころ、甲に建物(木造瓦葺2階建て居宅、既登記)を建築してその所有者となった。
②昭和31年10月ころから昭和32年10月22日までの間に、Aから、毎月21日限りで金5000円ずつ昭和40年...
参考になりました。