基礎実習レポート 1-11 タンパク質と薬物の相互作用
実験実施 2010/05/22
提出 2010/05/26
Ⅰ.目的と概要
薬物は生体内に取り込まれると、多くの場合、アルブミンなどの血清タンパク質に結合し輸送される。この結合の様子をin vitroで観察することを目的とする。
Ⅱ.原理
テキストに準ずる。
Ⅲ.実験手順
テキストに準ずる。ただし330μMのBSA溶液とリン酸緩衝液を混合して、35μM、45μM、70μM、140μMのBSA溶液を調製した。また、リン酸緩衝液のみを入れたものを0μM のBSA溶液として測定に用いた。
Ⅳ.結果
試料にHABAを入れて測定した吸光度とメタノールの吸光度の測定値(各濃度につき3)の操作を繰り返して5回分)を【表1】に示す。ただしHABA濃度は以下の式によって求めた。この結果を用いて、HABAとメタノールの吸光度差を求め【表2】に示した。また、この表2において、BSA濃度が0μMの吸光度はHABAの影響を反映せず、BSAそのものの波長482nmにおける吸光度であるため、各BSA濃度からBSA濃度0μMの吸光度を引いた値を【表3】にまとめた。表3で求めたHABA濃度と吸光度差の関係を【グラフ1】に示した。
次にBSA濃度の逆数と吸光度差の逆数の関係を【表4】に示した。またこのグラフを【グラフ2】として示した。
【表1】HABAの試料の吸光度とメタノールの吸光度の測定値
【表2】HABAの試料の吸光度とメタノールの吸光度の差
【表3】HABAの試料の吸光度とメタノールの吸光度の差の各BSA濃度における真の値
【表4】BSA濃度の逆数と吸光度差の逆数
【グラフ1】HABAの試料の吸光度とメタノールの吸光度の差の関係
【グラフ2】BSA濃度の逆数と吸光度差の逆数の関係
各薬物濃度において薬物がタンパク質に100%結合している状態における吸光度差、すなわちBSA濃度を無限に大きくした時の吸光度差を求めたい。BAS濃度を∞にした時の吸光度差ΔAhは、グラフ2で示した直線のy切片で表わされる。y切片はグラフ中に示した式から求めることができる。各HABA濃度におけるBSA濃度∞の時の吸光度差は、以下に示す結果であった。
(HABA濃度[μM]],Ah)
=(66.225,7.041-1)(131.579,4.057-1)(196.078,2.706-1)(259.740,2.111-1)(322.851,1.662-1)
=(66.225,0.142)(131.579,0.246)(196.078,0.370)(259.740,0.474)(322.851,0.602)
ここで、あるHABA濃度およびBSA濃度の時の吸光度をΔA1として以下の式で表わされるXを求めた。ただしΔAhはそれぞれのHABA濃度で求めたものを適用した。結果を【表5】に示す。
【表5】各濃度におけるXの値
表5を用いてScatchard解析を行い、タンパク質一分子あたりに結合しているHABAの分子数を求める。
タンパク質一分子に結合している薬物の数をr、全タンパク質濃度をPt、タンパク質に結合している薬物濃度をCb、タンパク質に結合していない薬物の濃度をCuとすると、以下の式が成り立つ。ただしこの実験においては、PtはBSAの濃度、CbはHABA濃度とXの積、CuはHABA濃度と(1-X)の積である。
ここで、nはタンパク質上の薬物結合サイト数、Kは結合定数である。rに対して(横軸)r/Cu(縦軸)をプロットすれば方向きからKを、x切片からnを求めることができる。
【表6】にCb、【表7】にCu、【表8】にr、【表9】にr/Cuを求めたものを示した。また【グラフ3】にScatchrdプロットを示した。ただし、マイナスになったもの(1成分)と外れ値(1成分)はプロットせず、近似直線は最小二乗法によって求めた。
【表6】Cbの計算結果
【表7】Cuの計算結果
【表8】rの計算結果
【表9】r/Cu
【グラフ3】Scatchardプロット
グラフから、x切片がタンパク質上の薬物結合サイト数であるから、
また、y切片がnKであるから結合計数Kは
Ⅴ.考察
今回Scatchardプロットにおいて外れ値を除外したのは、セルの汚れによる測定誤差が大きかったと考えられるからである。またr/Cuの値がマイナスになったものをプロットしなかったのは理論上マイナスの値が出てくることはなく、これもセルの汚れにより吸光度が実際の値よりも大きく出てしまったと考えたためである。
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