『素直な戦士たち』『黄色い髪』から見る教育
今回、私が読んだ『素直な戦士たち』は鹿野政直著『日本の近代思想』では受験エリートの仕立て方を主題とした本だと書かれている。本作は簡単に言うと、学歴社会を信じて疑わず、わが子を東大文科一類に入れるべく、夫選びに始まる緻密な計画を実行した母親と英才教育を施された子がどうなっていくかを書いた小説である。また、『黄色い髪』は、些細な出来事から同級生からいじめを受け、不登校になった女子中学生夏美の視点から、学校が子供の能力を測るものさしになっていることを暴く。
いずれの作品にも、子供を取り巻く環境がいかに息苦しいかの描写がある。
『素直な戦士たち』では英一郎(英才教育を施される子)は幾度となく、自分を取り巻く勉強ずくめの環境が、息苦しいかを訴える(口に出して言うこともあれば、奇怪な行動によっても現れる)が、母親の千枝は英才教育の“学説”に絶対の信頼を置いており気に留めない。父親の秋雄は妻の言ういわゆる“学説”に「それだけで片付けられるものじゃないのではないか」と疑いを抱きながらも、一度始めたことだから今更やめるわけにもいかない、ここでやめてしまって...