①被疑者のマンションの居室に対する覚せい剤の捜索差し押え令状に基づいて、そのマンションで被疑者と同居している者が所有しているバッグの中身を捜索することは許されるか。
②警察官は、覚せい剤所持及び、使用について相当理由もなく令状も入手していない被疑者に対して、任意同行を求めようと被疑者宅に赴いた。玄関で声をかけると被疑者が逃亡する虞があると考え、住居の裏側のはき出し窓から住居内に立ち入り、居間にいた被疑者に警察官であることをつげ、同行を求めた。被疑者は素直にこれに応じた。警察署で被疑者は尿の提出に任意に応じ、検査の結果、被疑者の尿中から覚せい剤が検出された。この尿検査についての尿鑑定書を書き、被疑者(被告人)の覚せい剤使用を認定し、有罪とするための証拠として提出することは許されるか。
③被告人は、平成23年8月1日ごろから同月6日ごろまでの間、東京都府中市内およびその周辺において覚せい剤であるフェニルメチルプロパン塩類を含有する者若干量を自己の身体に注射または服用して使用し、もって覚せい剤を使用したものである。」との公訴事実の記載は適法か。
被疑者のマンションの居室に対する覚せい剤の捜索差し押え令状に基づいて、そのマンションで被疑者と同居している者が所有しているバッグの中身を捜索することは許されるか。
同居人の所有するバッグの中身を捜索することは適法か?この点について、本問の捜索差押え令状は被疑者の自宅を捜索場所とするものであるところ、同居人のバッグを捜索することになる。そこで、場所に対する捜索令状によって捜索できる範囲が問題となる。
219条1項は捜索・捜査令状に「捜索すべき場所・物」などの記載を要求する。この「捜索すべき場所・物」について、いかなる程度まで特定されている必要があるかが問題となる。憲法35条1項の要請であるから、可能な限りその記載は個別・具体的であることが要請される。しかし、捜査の初期の段階では、それらの具体的内容が判明していない場合が多く、あまりに厳しく厳格な特定を要求することは捜査の必要性の見地から妥当ではない。したがってある程度概括的な記載であっても、合理的に解釈してその場所を客観的に特定し得る程度であることを持って足りると解する(判例に同旨)。
具体的には①空間的位置の明確性及び②管理...