Aは老人性痴呆症におちいり、判断能力が低下し寝たきりの状態であった。Aの息子Bは、Aが有する登記関係の書類等を利用して、Aの代理人と称して、Bが経営する会社の運営資金のためC銀行から借り入れた1000万円の担保としてA所有の土地に抵当権を設定した。その後Bが死亡し、Bの相続人である子Dは相続を限定承認した。その後、Aについて成年後見が開始し、Dが成年後見人としてBの無権代理行為の追認を拒絶した後に、Aが死亡した。DはAの土地を代襲相続するとともに、Bの無権代理行為を理由に、Cに対して抵当権設定登記の抹消請求を行った。どう解すべきか。
? 本事案はDが無権代理行為を行ったBの地位を相続し、その後本人であるAを相続した場合にBの行った無権代理行為の無効を主張し、Cに対して抵当権の抹消請求をしているというものである。
? Bの無権代理行為を有効とみなせるか
まず抵当権の抹消請求をするDに対して、CとしてはAB間に虚偽の概観があったのであるから94条2項の適用又は類推適用、そして表見代理(110条)により保護されると反論してくることが考えられる。もし適用されれば、本問Cは保護されDの抵当権設定登記抹消請求は認められないことから問題となる。
(
Aは老人性痴呆症におちいり、判断能力が低下し寝たきりの状態であった。Aの息子Bは、Aが有する登記関係の書類等を利用して、Aの代理人と称して、Bが経営する会社の運営資金のためC銀行から借り入れた1000万円の担保としてA所有の土地に抵当権を設定した。その後Bが死亡し、Bの相続人である子Dは相続を限定承認した。その後、Aについて成年後見が開始し、Dが成年後見人としてBの無権代理行為の追認を拒絶した後に、Aが死亡した。DはAの土地を代襲相続するとともに、Bの無権代理行為を理由に、Cに対して抵当権設定登記の抹消請求を行った。どう解すべきか。
Ⅰ 本事案はDが無権代理行為を行ったBの地位を相続し、その後本人であるAを相続した場合にBの行った無権代理行為の無効を主張し、Cに対して抵当権の抹消請求をしているというものである。
Ⅱ Bの無権代理行為を有効とみなせるか
まず抵当権の抹消請求をするDに対して、CとしてはAB間に虚偽の概観があったのであるから94条2項の適用又は類推適用、そして表見代理(110条)により保護されると反論してくることが考えられる。もし適用されれば、本問Cは保護されDの抵当権設定...