継母子譚の受容の背景
~心理学的な観点から~
私は、継母子譚の代表とされる『落窪物語』が通過儀礼の文学として読み継がれてきた背景に心理学的な要素が含まれると考える。そこで、このレポートにおいては、なぜ継母子譚が通過儀礼の文学として読み継がれてきたのかを、心理学的な観点を基に、論じていきたいと思う。なお、このレポートにおいては、継母子譚の代表的作品とされる『落窪物語』を中心に論じていくこととする。
まず、『落窪物語』がなぜ通過儀礼の文学として読まれてきたのかを、三谷邦明氏の説を下に考えていきたいと思う。三谷邦明氏は、『落窪物語』を含めた継母子譚は成女式を基盤に成立した文学であると考える。成人になる為の儀式では、子供である人格が死に、大人となって再生する儀式であるので、死=再生の為の試練に出会う場として考えられているが、この試練が継子いじめに相当し、継母子譚の話型に転化する要素を持っていると考えられている。また、落窪の間は、服喪の際にこもる土殿と同様のものとして捉えられているため、落窪の間にこもることは「死」を意味することとなる。その落窪の間から逃れ、少将と結ばれることからも死=再生...