EU統合はそこに暮らす人々、ひいては世界の人々の幸福にどのような貢献を果たすと考えられるか。もっとも基本的な目的と具体的な発現状況を要約して述べよ。
EUは従来のECを基礎として、1993年11月、マーストリヒト条約に基づき設立されたが、その最も重要な目的として、平和の維持・確立といった現実的な要請が挙げられる。EUを不戦共同体として、ヨーロッパに平和を実現することは、人々の願いであり、古来よりヨーロッパでは戦火が耐えなかったことを考えれば容易に理解できる。ヨーロッパでの平和論の興隆は30年戦争が勃発していた16世紀ごろにすでに見られる。とりわけ、ブルボン家のアンリ4世の宰相シェリー公爵が唱えた「グランド・デザイン(大計画)」は後世に影響力を残した。その後、国際舞台で平和の実現のために統合の必要性が認識されたのは、特に第1次世界大戦と第2次世界大戦によってである。第1次世界大戦後の危機に直面して、オーストリアのクーデンホーフ・カレルギー伯爵は、大戦後の荒廃したヨーロッパが平和と秩序を回復し、米ソ両大国に対抗しうるには、ヨーロッパ諸国が政治・経済的同盟を結成する必要があると、「パン・ヨーロッパ運動」を提唱した。しかし、1930年代に入ると、国家主義が台頭し、この運動も鎮圧された。そして、ヨーロッパ諸国の協調は弱まり、再び世界大戦へと突入してしまった。2度にわたる戦争で、疲弊しきったヨーロッパにとって、再び栄光を取り戻すには、ヨーロッパが結束を図ること、とりわけドイツとフランスの30年戦争以来続く不協和音を解消し、人々が平和で安全で、自由な生活を送れる共同体を建設することを提唱したのはイギリスのチャーチルであった。
EU統合はそこに暮らす人々、ひいては世界の人々の幸福にどのような貢献を果たすと考えられるか。もっとも基本的な目的と具体的な発現状況を要約して述べよ。
EUは従来のECを基礎として、1993年11月、マーストリヒト条約に基づき設立されたが、その最も重要な目的として、平和の維持・確立といった現実的な要請が挙げられる。EUを不戦共同体として、ヨーロッパに平和を実現することは、人々の願いであり、古来よりヨーロッパでは戦火が耐えなかったことを考えれば容易に理解できる。ヨーロッパでの平和論の興隆は30年戦争が勃発していた16世紀ごろにすでに見られる。とりわけ、ブルボン家のアンリ4世の宰相シェリー公爵が唱えた「グランド・デザイン(大計画)」は後世に影響力を残した。その後、国際舞台で平和の実現のために統合の必要性が認識されたのは、特に第1次世界大戦と第2次世界大戦によってである。第1次世界大戦後の危機に直面して、オーストリアのクーデンホーフ・カレルギー伯爵は、大戦後の荒廃したヨーロッパが平和と秩序を回復し、米ソ両大国に対抗しうるには、ヨーロッパ諸国が政治・経済的同盟を結成する必要があると、「パン・ヨ...