カンディード【薯】ヴォルテール
主人公カンディードは大きな城の中で、城主の縁者として心根優しく成長する。人を疑うことを知らない彼は城の中で家庭教師であるバングロス師の教えを忠実に受け止め「この最善の可能世界においては、一切の事柄は善である」というライプニッツの楽天主義を信じて幸福に育った。しかしある日城の美しいキュネゴンド姫との抱擁を城主に見られて、楽園のような城を追い出され、カンディードの苦難の放浪の旅が始まる。
フランスの小説家、劇作家、思想家であり、信教と言論の自由を求める合理主義の啓蒙思想家として活躍していたヴォルテールは18世紀当時の支配階級に受け入れられており、「この最善の世界においては、すべては最善に仕組まれている」というライプニッツの楽天主義を皮肉るためにこの本を書いたといわれていますが、しかし、彼に襲い掛かる多くの災難の前で「全ては善」と言い切るような形而上学的解決ではなく、現実的解決を求めようとしたヴォルテールの態度は責めきれるものではありません。『カンディード』は、現代の古典たりうるメッセージ性を強く遺しているように思われます。また、作者の考えを代弁する立場の登場人物は決まって自分の身分や教養...