民族について
「民族」の概念は、一体何をもって「民族」とするのかが、宗教、言語、風俗など多岐にわたっており、しかもそれぞれが複雑に絡まりあって存在している。
ある国の「国籍」を所有していれば(重国籍、無国籍の場合はその限りではないが)、好むと好まないとに限らず、意識的にせよ便宜的にせよ、その人はその国の「国民」とみなされる。
「国民」に関して言えば、「国民」とは「想像の共同体」であると指摘したベネディクト・アンダーソンが思い浮かぶ。彼は、「国民とはイメージとして心に描かれた想像の政治共同体である-そしてそれは、本来的に限定され、かつ主権的なもの(最高の意思決定主体)として想像される」1
ベネディクト・アンダーソン『増補・想像の共同体 ナショナリズムの起源と流行』(白石さや・白石隆訳.NTT出版.1997)
また、彼の言葉を引用している西川長夫の『国境の越え方』2
西川長夫『増補・国境の越え方-国民国家論序説-』(平凡社ライブラリー.2001)
多民族国家の例を引くまでもなく、「国民」は一般に雑多な文化を担う集団の集まりであるから、「国民」がある単一な文化の基礎的な集団でありえ...