1.はじめに
マルクス経済学の商業資本論には、大別すれば、二つの研究の流れがある。宇野弘蔵に代表される流れと森下二次に代表される流れである。二つの流れには交わるとこるが多いと思われている。本稿は『商業資本論の射程』の第一章を読んだ上で、商業資本と取引関係には産業資本にとってのメリット、「押し戻し」の不足および今後の課題について取り上げたいと思う。
2.産業資本のメリット
産業資本は産業革命により登場した。主に産業設備を購入し、それを稼動させることで商品を生産し、販売により利益を上げる。利益を産業設備に対して再投資し、生産活動と利潤の拡張を目的にする。産業資本は貨幣資本、生産資本、消費資本の姿態変換(変態)し、生産過程で剰余価値を生み出し、価値増殖をしていく資本である。商業資本とは商品を生産過程で生み出すのではなく、産業資本が生産した商品資本の流通を媒介すること自体を商品とすることにより、利潤を得る資本である 。
商業資本論を展開するためには、産業資本自らが流通過程を全面的に担当するものとして、そうした産業資本における準備機構の性格が明らかにされなければならない。その場合のに流通資本の質の規定に立ち入らず、流通資本の量に問題の焦点に絞りはずである。流通資本の量の規定はおよそ三通りの理解がある。一つは余程の
1.はじめに
マルクス経済学の商業資本論には、大別すれば、二つの研究の流れがある。宇野弘蔵に代表される流れと森下二次に代表される流れである。二つの流れには交わるとこるが多いと思われている。本稿は『商業資本論の射程』の第一章を読んだ上で、商業資本と取引関係には産業資本にとってのメリット、「押し戻し」の不足および今後の課題について取り上げたいと思う。
2.産業資本のメリット
産業資本は産業革命により登場した。主に産業設備を購入し、それを稼動させることで商品を生産し、販売により利益を上げる。利益を産業設備に対して再投資し、生産活動と利潤の拡張を目的にする。産業資本は貨幣資本、生産資本、消費資本の姿態変換(変態)し、生産過程で剰余価値を生み出し、価値増殖をしていく資本である。商業資本とは商品を生産過程で生み出すのではなく、産業資本が生産した商品資本の流通を媒介すること自体を商品とすることにより、利潤を得る資本である 。
商業資本論を展開するためには、産業資本自らが流通過程を全面的に担当するものとして、そうした産業資本における準備機構の性格が明らかにされなければならない。その場合のに流通資本の質...