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刑法事例演習教材
15 愛人への貢物
200万円の小切手を振り出した行為について
甲は、愛人Dへのプレゼントのために200万円の腕時計を購入し、その代金支払いに充てるため、A会社代表取締役B名義で小切手(以下、小切手①)を振り出した。この行為により、甲には、有価証券偽造罪 が成立するとも思われる(162条1項)。
しかし、甲は、A会社の経理部長として、同会社の小切手の振り出し業務に従事していた。そして、甲は、同会社の小切手を保管し、会社の業務運営に必要な限り 、その使途、金額に制限なく、その自由な判断によりA会社代表取締役B名義の小切手を振り出す権限を与えられていた。そのため、甲は、小切手を振り出す一般的・包括的な権限を有していた。したがって、小切手①は、作成権限のない者が他人の名義を冒用して作成したとはいえず 、偽造されたものとはいえない。
よって、甲には、有価証券偽造罪は成立しない(162条1項)。
次に、甲が振り出した小切手①によって、A会社のF銀行G支店当座預金口座からCのE銀行本店当座預金口座に200万円が入金されたことにより、甲は、業務上横領罪 が成立しないか(25...