中小企業は、わが国における産業構造において大きな比重を占め、かつ重要な役割を果たしている。また、業種別でみても、製造業、建設業、商業・サービス業いずれをみても中小企業はわが国経済社会において戦後一貫して高い地位を占めている。とくに、製造業について中小企業の付加価値シェアをみると、30年代から今日に至るまでの経済の質・量両面における大きな変化にもかかわらずきわめて安定的に推移している。
このように、戦後40年間を通じて急速な物的拡大と産業構造の物的変化のなかで一貫して高い地位を保持し、大きな役割を果たしてきた中小企業の経営は、大企業経営に比べてどのような特質をもっているのか。また、それにもかかわらずなぜ中小企業が多数存在するのか、その要因を以下に論ずる。
中小企業は大企業と対比してみると、一般に次のような経営上の特質をもっている。
①個人的色彩が強い
中小企業の場合、個人企業、法人企業とを問わず一般的に個人的色彩がきわめて強い。したがって、経営者の個人的能力によって経営状態が大きく左右される。小零細企業になると家族労働への依存度が大きく、家計と経営の分離、事業所と居宅の分離も不...