法学教室の連載されていた問題の解答です。参考までに。
第19回 骨肉の争い
設問1
設問前段について
甲会社が乙会社にした現物出資は、乙会社の代表取締役かつ甲会社の取締役であるCによって行われており、「取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき」にあたり、利益相反行為である(356条1項2号)。しかし、本件現物出資について、甲会社取締役会は承認していなかった(356条1項)。そこで、本件現物出資は無効であり、乙会社は甲会社に土地を返還しなければならないのではないか。取締役会の承認なく行われた利益相反取引の効力について問題となる。
そもそも、会社法が利益相反取引を規制する趣旨は、利益相反取引が会社の利益を害する危険のある取引であるため、事前に重要な事実の開示と取締役会の承認を要求することにより、会社に損害が生じることを防止することにある。そうであるならば、取締役会の承認なくして行われた利益相反取引は、原則として無効である。
もっとも、相手方の取引の安全を保護する必要もある。そこで、会社は、相手方の悪意を立証しなければ、当該利益相反取引の無効を主張できないと考える。
本件では、乙会社の代表取締役であったCは、甲会社の取...