旧司法試験民法の答案です。第1次作成版。参考までに。
平成12年度第1問
AB間の法律関係について
Aは、Bから本件絵画をCの真作と誤信して買い受けた。そこで、Aは、本件売買契約の①錯誤無効(95条)または②瑕疵担保責任に基づく解除(570条、566条1項)を主張し、代金の返還を請求することはできないか。
「錯誤」とは、内心的効果意思と表示の不一致をいう。しかし、本件では、Aには、本件売買契約の動機に錯誤があるにすぎない。もっとも、動機の錯誤も、表意者保護という95条の趣旨と取引の安全とを調和するために、その動機が明示または黙示に表示された場合には、「錯誤」にあたりうると考える。そして、Aは、本件絵画が真作であるという動機は、Bに対し、少なくとも黙示に表示されていたといえる。そして、本件絵画を真作と誤信しなければ本件売買契約を締結しなかったと考えられる。したがって、要素の錯誤が認められる。また、本件絵画について、Bも真作であると誤信していた以上、Aが誤信したことに重大な過失があるとはいえない。
よって、本件売買契約は、錯誤により無効である。
では、Aは、本件絵画には「隠れた瑕疵」があったとして、本件売買契約を解除することはできない...