向老期(60歳前後~65歳前後)
向老期は社会の第一線で活躍している人が、そろそろ活動の主流から離脱していく、いわゆる社会的引退の始まりの時期であり、その後の老年期への準備状態の時期ともいえる。
年齢的にはほぼ60歳前後からであり、生物学的には、形態的にも機能的にも、また体力においても低下の一途をたどる。自覚的にも機能の衰えや疲労感を自覚するが、日常生活や社会活動を行ううえで障害となることはまだ少ない。
精神的には十分に発達しており、総合的判断や人間関係の調整能力もあり、人格的にも成熟しているが、定年や社会的引退を前にしての寂しさや、あせりを感じる時期でもある。
A 向老期の特徴
1.身体的特徴
1)老化のしくみ
人は年をとるにつれて、外見的にもまた生理機能においても変化し、低下がみられる。老化のしくみについての学説は様々であり、①生物時計説、②DNA説、③内分泌説、④免疫説、⑤化学反応説などが示されている。生物時計説の考え方では、すべての生物は一定の寿命をもち、その限られた時間内にほぼ正しい変化を遂げていくことになる。
一定の周期で生命のリズムが運命づけられている現象は生物全般につい...