取締役を選任する機関は株主総会であり、執行役を選任する機関は取締役会であるが、その選任決議に基づいて、会社の代表機関が被選任者に対して就任の申込みをなし、被選任者がこれを承諾することによって任用契約が成立する。この任用期間は、民法の委任に関する規定にしたがうので(三三〇・四〇二Ⅲ)、原則的に無償であるが(民六四八Ⅰ)、通常、報酬を付与する特約がされる。そして、取締役会設置会社において任用契約を締結するのは会社の代表取締役(委員会設置会社では代表執行役)であり、取締役・執行役の報酬等の決定も業務執行行為の性質を有し取締役会あるいは代表取締役・代表執行役の権限に属するものとしてもよいはずであるが、取締役会や代表取締役・代表執行役に自己または同僚の報酬を定めさせると、いわゆるお手盛りとなるおそれがある(取締役は執行役を兼ねることができる)。そこで、三六一条および四〇四条三項はこの弊害を防止し、会社の利益を保護するために設けられた政策的規定である。なお、取締役が取締役報酬(執行役を兼ねるときは、さらに執行役報酬)等を決定し、それを受け取ることは利益相反取引にあたるから、三六一条および四〇四...